幕下で長い相撲の末に決着がつかず、2番後に取り直しとなる珍事があった。東幕下14枚目の琴拳龍(佐渡ケ嶽)と、西幕下14枚目の栃武蔵(春日野)の初顔合わせ。最初の一番は、互いに土俵際まで寄り立てる場面があったが、決めきれずに3分30秒を超えた。動きが止まったところで、勝負審判が手を挙げて「2番後取り直し」が決まった。十両以上では水をつけるなど、呼吸を整えた後に勝負を止めた時点と同じ体勢から再開する「水入り」。幕下以下ではいったん土俵から下がり、2番後にあらためて取り直しとなる。取り直しの一番も。際どい勝負となり、土俵下にもつれながら倒れたが、琴拳龍が寄り切り。今度は早い勝負で決着をつけ、3勝2敗とした。

大粒の汗を流しながら引き揚げてきた琴拳龍は、開口一番「長かったですね」と、苦笑いで疲れ切った表情を見せながら話した。モンゴル出身の21歳は、2番後取り直しは初体験どころか「知らなかったです」という。それだけに「まわし待ったかと思った。土俵下に下りてからも(まげをつかむなどの)反則負けかなと思った」と、悪いイメージが頭をよぎったという。だが取り直しと分かり「最初の相撲よりも(気持ちを)上げていった」と、気合十分で臨み、勝ちきった。

「これを勝ったのは大きい」と、負ければ2勝3敗と勝ち越しに後がなくなっていた上に、疲労度が各段に増していた状況とあって、ホッとした表情を見せた。取り直しの前には、両手首に巻いていたテーピングを外した。すでに、まわしを引きつけ続けていた左手の握力はなくなりかけていただけに、血流を良くして少しでも疲労回復に努めるなど、瞬時の判断、対応も光っていた。勝ち越しに向けて、弾みのつく白星を手にした。