西前頭9枚目の遠藤(34=追手風)が、幕内では20年11月場所以来、26場所、実に5年ぶりに自己最長に並ぶ無傷の4連勝を飾った。欧勝馬をすくい投げで破り、勝ちっぱなしは前頭阿武剋と2人だけ。4月に地元石川県2カ所で春巡業が行われるが、安易に好成績での凱旋(がいせん)の誓いは立てない。いつ休場してもおかしくない、ギリギリの戦いだけを約束した。

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突き放されても、いなされても、遠藤は、あきらめなかった。立ち合い、二の矢と阻まれた左差し。“三度目の正直”でねじ込むと返す刀のすくい投げで、欧勝馬を前のめりに倒した。常に全力。端正なマスクとは対照的に、不格好でも必死に白星をつかみ取った。取組後、寡黙な男は「勝ったので気分はいい」と笑った。5年ぶりで自己最長タイの初日から4連勝に「そんなこともある。何がいいのか分からないから、コメントのしようがない」と、珍しく冗談めかした。

能登半島地震以降、故郷を背負って戦ってきた。津波は実家近くまで迫り、慰問で帰省すると、変わり果てた故郷に言葉を失った。だからこそ土俵入りでは、故郷の風景などがデザインされた化粧まわしを意図的に多く用いてきた。「少しでも励みになるなら」と、一段と勝ちにこだわり、勝てなくても必死に戦った。

昨年は震災直後、今年は震災の記憶がよみがえる1月の初場所で、2年連続負け越した。思いは強い。結果を残せない歯がゆさを胸にしまい込んできた。この日の取組後、石川県2カ所での春巡業への思いを問われても「今場所、最後まで土俵に上がれるか分からない。だから春巡業のことはまだ考えられない。ごめんなさい」と語った。いつ現役生活が終わっても後悔はない。「最近は声援も大きいので力になる」。遠藤の相撲には、人の心を揺さぶる力がある。【高田文太】