新入幕の東前頭14枚目草野(24=伊勢ケ浜)が、優勝制度が確立した1909年(明42)以降、史上3人目の新入幕優勝の可能性を残して千秋楽に臨む。2敗でトップに並んでいた東前頭筆頭の安青錦(21=安治川)を寄り切り。7連勝中だったウクライナ出身の新鋭を止め、11勝3敗で並んだ。もう1人の2敗、東前頭15枚目の琴勝峰(25=佐渡ケ嶽)は関脇霧島に勝って12勝2敗。初めて単独トップに立った。40年ぶりに本場所会場が変更し、新会場IGアリーナの初代優勝は、平幕3人に絞られた。
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また、ちょんまげの怪物が初優勝へと迫ってきた。2場所連続十両優勝の実績を引っ提げ、新入幕を果たした草野が、千秋楽に優勝の可能性を残す3人の一角に名を連ねた。負ければ優勝の可能性が消滅していた安青錦戦。立ち合いから突いて、突かれて、再び突進すると、得意の右四つに組み止めた。休まず攻めて、左から上手出し投げを打って土俵際に追い込んだ。そこから豪快なすくい投げ。投げを打つ直前、相手の足が土俵を割っていたため、決まり手は寄り切りだったが、攻めだるまと化した。
「止まらずに攻められてよかった。朝から師匠には『止まるなよ』と言われ、その通りに相撲を取れた。気合は入っていた」。取組後も気持ちの高ぶりを抑えきれない表情で話した。今場所、旋風を起こしている安青錦の低い姿勢からの攻め。草野は幕下時代の昨年夏場所で対戦、その時も勝っており、面食らうことはなかった。加えて今場所で対戦した同部屋の兄弟子に「引いても落ちないと聞いて、絶対に引かないと思った」と明かし、一段と攻め気で臨んで勝ちきった。
アドバイスしてくれたのは、学生横綱となった日大で2学年先輩の尊富士だった。尊富士は昨年春場所で110年ぶり2人目の新入幕優勝を達成。それ以来、3人目の快挙を目指す。尊富士の後、大の里が最速の初土俵から所要7場所で初優勝など、相撲史に残る快挙続き。共通するのが、出世の早さに髪の伸びが追いつかず、大銀杏(おおいちょう)を結えないちょんまげだったこと。今場所前に初めてまげを結った草野はこの日「優勝はあまり考えていない。ここまでやれるとは思っていなかった」と話し、初々しく笑った。
テレビ解説を務めた師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱照ノ富士)も「止まらずに動いたことが勝利につながった」と、助言通りに動いて快勝につなげたことを称賛した。1日4食で夏バテ対策し、連日の銭湯通いで心身リフレッシュ。千秋楽も「自分の相撲を取るだけ」と自然体。琴勝峰が敗れ、決定戦と合わせて2番以上取ることが逆転優勝の条件だが、スタミナも心の準備も万全だ。【高田文太】
◆草野直哉(くさの・なおや)2001年(平13)6月25日、熊本県生まれ。24年夏場所、幕下60枚目格付け出しで初土俵、25年春場所新十両。十両で2場所連続優勝を果たし、今場所新入幕。得意は右四つ、寄り。家族は両親と兄。183センチ、151キロ。

