横綱の豊昇龍(26=立浪)が逆転優勝に望みをつないだ。関脇の若隆景をはたき込みで下し、12勝2敗。12、13日目には2連敗を喫したが、立ち合い変化で白星を拾った。

悲願の横綱優勝への条件は連勝のみ。この日、不戦勝となった横綱大の里(25=二所ノ関)と千秋楽で3度目の優勝を懸けた大一番を迎える。

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取組時間は0秒7だった。豊昇龍は立ち合いから勢いよく突っ込んできた相手に反応し、右に跳ぶと、冷静にいなした。一瞬で終わった結びの一番に館内はため息に包まれた。観客も開いた口がふさがらない様子だった。

横綱の立ち合い変化に賛否はあるが、1敗も許されない状況で取ったとっさの判断だった。「今日は勝ちにいった」。変化で決めにいったのかとの問いには「はい」と認めた。満員札止めとなった観客を裏切る消極的な相撲には、八角理事長(元横綱北勝海)も「今日来たお客さんに申し訳ない」と謝罪の言葉を残すほどだった。

初日から11連勝と波に乗っていたが、12日目は新小結の安青錦、13日目は大関の琴桜に敗れ、失速。師匠の立浪親方(元小結旭豊)によると、本場所前になった「ぎっくり腰」が響いたのか、26日夜にも腰痛を訴えたという。体調面での不安があったとはいえ、横綱らしさに欠けたのは事実。「立ち合いから突っ張っていく気力があるか」。取組前の八角理事長の期待も裏切った。

師匠も「体の芯が足りない。基礎を根本的にやらないといけない」と課題を指摘しつつ、本場所の戦いぶりについても「ふがいない相撲を取ってはダメ。しっかりやってもらいたい」と厳しい注文をつけた。

千秋楽の相手は、同じく横綱初制覇を狙う単独トップの大の里。この日、不戦勝となったライバルについては「気にしない」と一言で返した。過去の戦績は1つの不戦敗を除くと6勝1敗と優勢。それでも、豊昇龍が向き合うのは、過去でも未来でもなく、今だ。「終わったことは終わったこと。残りの一番しっかり集中して頑張っていきたい」。大一番を真っ向勝負で飾れるか。【泉光太郎】

◆千秋楽の横綱決戦 千秋楽の横綱同士の対戦で優勝が決まるのは、12勝2敗の相星決戦となった20年春場所の白鵬-鶴竜戦以来、5年半ぶりとなった。同場所千秋楽で白鵬は、鶴竜を寄り切って44度目の優勝を飾った。その後、鶴竜は皆勤場所がなく引退。白鵬もその後、皆勤は1場所だけだった。白鵬と入れ替わるようにして昇進した照ノ富士が、もう1人の横綱と同時に出場した経験はない。

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