東前頭18枚目の明生(30=立浪)が、特別な白星をかみしめた。10月に腰を手術し、初日から9日目まで休場。幕尻で勝ち越しの可能性が消滅し、来場所は5年半ぶりの十両転落が確実となった。それでも出場を決めたのは、この日、思い出した温かい歓声を、もう1度味わいたかったからだった。途中出場した前日10日目は敗れたが、この日は前頭御嶽海を肩透かし。持ち前の豊富な運動量は健在で、大関経験者を転がす力と技は健在だった。

明生 九州の土俵で勝ち名乗りを受けることを目指していたし、勝って温かい声援を受けることができた。これだけで出てきた意味がある。

鹿児島県の奄美大島出身。ご当所の九州場所には、特別な思い入れがある。

明生 土俵入りから、相撲を取った後まで、たくさんの声援が聞こえてきたので、すごくうれしかった。

実際にこの日、会場に観戦に訪れていた人の中に、奄美大島出身の人は数えるほどしかいなかったかもしれない。それでも、同じ九州出身ということで、大勢の相撲ファンから後押しを受けた。それも中学を卒業後、実直に相撲と向き合ってきた、真面目な明生の性格を知るからこそ。九州出身のファン以外も、痛みを押して出場した明生に、声援を送っていたはずだ。

出場できなかった9日目まで、部屋宿舎でテレビ観戦していた。

明生 もともと出ようとは思って準備はしていた。ただ、みんなの熱い相撲をテレビで見て「相撲って面白いな」って思っていた。

心が燃えてくる感情を必死に抑え、万全を期して出場にこぎ着けた。そんな明生が、途中出場した10日目から、土俵入りで着けている化粧まわしは地元後援会から贈られたもの。九州の、地元のファンからの応援に精いっぱい応えたいと、決して口数の多くない男が、故郷愛を前面に出して戦っている。【高田文太】

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