[ 2014年7月1日8時42分

 紙面から ]PK戦でギリシャのゲカスのシュートを止めるコスタリカGKナバス(撮影・PNP)<W杯:コスタリカ1(5PK3)1ギリシャ>◇決勝トーナメント1回戦◇6月29日◇レシフェ

 中米の小国コスタリカが初の8強に進出した。ギリシャ相手にPK戦で勝利。10人になりながら、GKケイロル・ナバス(27)の活躍で激戦を制した。北中米カリブ海からのベスト8進出は02年大会の米国以来で、コスタリカとしては初。「死の組」と言われたD組をまさかの1位突破した勢いで、歴史を塗り替えた。

 両手両足をくねくねと動かした直後、ナバスは右に跳んだ。PK戦ギリシャの4人目、FWゲカスのキックを左手一本ではじき返した。両拳を強く握り、ガッツポーズを繰り返す名手。コスタリカの5人目、DFウマニャのキックが決まると、ナバスは歓喜の輪の中で雄たけびを上げた。

 堅守を武器とするチームで、ナバスはこの日も好プレーを連発した。後半21分にDFドゥアルテが2枚目の警告を受けて退場、その後は圧倒的にギリシャに攻められた。後半ロスタイムに失点したが、延長でも集中は切れなかった。延長まで含めて自チームの4倍の24本のシュートを打たれ、13本の枠内シュートのうち12本をストップ。圧倒的な存在感で仁王立ちした。

 今大会でも「最弱国」の1つとみられていたコスタリカ。チームも自分たちの立ち位置を分かっていた。決勝トーナメントを見据えて、この1週間はPKの練習を積んだ。蹴る順番も決めて、シミュレーションを繰り返した。5人全員が完璧に決めた。外れるリスクもあるゴール上部へのキックを楽々決めてみせた。

 もちろん、自信の裏にはナバスへの絶対的な信頼がある。「彼の力を信じていた。完璧なパフォーマンスだった」とピント監督は絶賛した。

 チームメートから手荒な祝福を受け続けたナバスも「コスタリカの国のために戦った」と、初のベスト8進出を喜んだ。次はオランダ。「相手がどこであろうと、私は勝ちたい」というピント監督の言葉に、ナバスは大きくうなずいた。

 ◆ケイロル・ナバス

 1986年12月15日、コスタリカのサン・イシドロ生まれ。05年デポルティボ・サプリサでプロデビュー。10年に当時スペイン2部のアルバセテ移籍。11年、期限付き移籍でレバンテ。翌年完全移籍。今季リーグ戦37試合に出場。06年に代表デビュー。57試合出場(6月29日現在)。184センチ、78キロ。

 ▼北中米勢の8強

 コスタリカがW杯で初の8強入り。過去に北中米勢の8強以上は、米国(30年、02年)キューバ(38年)メキシコ(70年、86年)が記録。4強となれば、30年の第1回大会の米国以来、19大会ぶり2度目となる。