今月末に閉場する国立劇場のさよなら公演が開催中です。大劇場では通し狂言「妹背山婦女庭訓」が上演中で、同じく閉場する国立演芸場では14日から特別企画公演「日本の寄席芸」が行われます。

国立劇場は1966年(昭41)、国立演芸場は79年に開場しました。国立劇場建設の動きは明治時代からありましたが、実現したのは戦後になってからでした。国立劇場では古典の復活上演の一方、新作歌舞伎もよく上演されました。中でも、三島由紀夫氏とは、新作歌舞伎「椿説弓張月」が68年に上演されるなど関係は深く、国立劇場の理事を務めた時期もありました。三島氏が設立した民間防衛組織「楯の会」の会員によるパレードが劇場屋上で行われたこともありました。

そして、人間国宝として女形のトップに立つ坂東玉三郎が注目されたのも、三島氏の「椿説弓張月」で演じた白縫姫でした。今月の公演パンフレットにはゆかりの歌舞伎俳優たちによる国立劇場の思い出などを書いた色紙が掲載されていますが、玉三郎は「若き日の修業の場であった初代国立劇場 懐かしく有り難い思い出ばかりです」とつづっています。

閉場した後は、建て替えの工事が始まるはずでしたが、その予定が不透明です。当初は劇場の上にホテル、レストランなども併設される25階建ての複合施設として29年秋にも再開場する予定でした。しかし、これまで2度の入札が行われたものの、落札に至りませんでした。建設資材や人件費などの高騰もあって、折り合わなかったようです。今後、3度目の入札が行われる予定とあって、再開場の時期はずれ込みそうです。

閉場式は今月29日に行われ、私も出席する予定です。周囲では「再開場する時は元気で新しい劇場を見たいね」との言葉が行きかいます。私も健康に気をつかいつつ、こけら落とし公演を楽しみに待ちたいと思います。【林尚之】