カーク・ダグラス主演の「ヴァイキング」(1958年)が、上映館に近かった帝国ホテルの食べ放題料理の由来となり、日本のセルフサービス形式の代名詞として定着したのは知られた話だ。

 が、以降、海賊映画に大ヒットはなく、まだ、メジャー作品の実績もなかったジョニー・デップ主演の第1作(03年)は、ハリウッドの悲観ムードの中で公開されたという。

 予想外の大ヒットからシリーズが始まったわけで、最初から全9作の構想があった「スター・ウォーズ」のような羅針盤はない。自由な分だけ外れもあったと思う。好みもあるが、3、4作にはたるみを感じた。

 一転、第5作の今回は原点回帰の快作だ。デップと若い2人(カヤ・スコデラリオ、ブレストン・スウェイツ)を軸に物語は進行するが、2人の血脈をたどって、いわばシリーズ・オールスターの競演となる。

 原題の「死人に口なし」はシリーズ発祥のディズニー・ランド「カリブの海賊」の決めゼリフだ。ガリレオ・ガリレイの日記が謎解きの鍵となる新たな仕掛けも加わって飽きさせない。デップの若返ったような動きに改めてジャック・スパロウ役への執着を感じた。【相原斎】

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