脳内だけで10年間、初恋の人に片思い中の24歳ヨシカ(松岡茉優)の物語。中学の同級生イチ(北村匠海)を思い続け、アンモナイトを愛で、けっこう楽しく過ごしているヨシカが、会社の同僚ニ(渡辺大知)から人生初告白されたことで、日常が大きく動きだす。

 映画初主演とは思えない松岡のコメディエンヌぶりに脱帽。内気で、妄想がすごくて、若干うざくて、しかもかなりパワフルな主人公。松岡と主人公がほぼ同化して見えた。脚本も手掛けた大九明子監督の演出もあるのだろうが、せりふの間も表情も動きも絶妙だった。松岡だったからこその躍動感だ。

 東京に出て来た女の子が、みんなキラキラした生活をしているわけでもない。そんな等身大も魅力的だ。地味なアパートに住んで、地道に暮らして、たまに楽しみもあって。ヨシカには会社にも話せる同僚がいて、告白もされて、楽しそうじゃないか、と思うのだが、孤独感とか満たされない気持ちは、人それぞれだろう。

 「ああ、分かるなあ」という共感に、ぶっとんだファンタジーな主人公が良い具合に混ざり合っている。片桐はいり、古舘寛治のキャラクターが愛らしい。【小林千穂】

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