木村拓哉と二宮和也の共演で製作発表時から話題を呼んだ「検察側の罪人」。期待を裏切らないどころか圧倒される出来栄えに、試写室で震えてしまった。

そもそも、検察側の“罪人”とは? 耳慣れない言葉の組み合わせがしっくりこない前半。キムタクは正義感あふれる優秀な検事で、彼を尊敬してやまないニノは、気概ある検事の卵だ。物語の本質が見えてくる後半、同じ方向を向いていたはずの2人の正義が、真っ向から対立する。

英題は「KILLING FOR THE PROSECUTION」。ある正義のための殺人、だ。昨年公開の「三度目の殺人」をほうふつとさせるテーマだが、より理解しやすく、ストーリーのインパクトも大きい。

ひっくり返りそうなほどの迫力に驚かされたのは、二宮の取り調べシーン。悪魔に取りつかれたかのようなどう喝っぷりには、彼がアイドルであることさえ忘れ、座席で思わず身をすくめてしまった。被告人にふんする名脇役、酒向芳(さこう・よし)の文字通りの“怪演”にも度肝を抜かれるし、吉高由里子の二面性のある普通感は、物語に妖しい花を添えている。【杉山理紗】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)