藤子不二雄作「怪物くん」でも、お供の1人となったフランケンは見た目とは正反対に心優しく泣き虫である。この悲しき怪物はいかにして生まれたのか。

19世紀の英国で怪奇小説「フランケンシュタイン」を著したのは当時18歳のメアリー・ゴドウィンだった。映画は階級社会のいびつな空気の中で、作家志望の女性が希代の怪物を生み出すまでの曲折を描く。

思想家夫妻の間に生まれたメアリーは早熟だ。書店を営む父の書棚から怪奇小説を読みあさり、自作をノートに書き付ける。保守的な社会の空気が彼女には重たい。16歳で詩人シェリーと駆け落ち、17歳で産んだ女児を数日で死なせてしまう。フランケンの哀愁の背景が見えてくる。純情としたたかさを併せ持ったような役柄にエル・ファニングがはまっている。この間、退廃の詩人バイロン卿やその侍医ポリドリと出会い、「人造人間」のイメージが形になっていく。

メモ類のシミにまでこだわる演出で19世紀の英国を再現しているが、サウジアラビア出身のハイファ・アル=マンスール監督の、異文化をのぞくような目が、1つ1つのシーンを面白おかしく見せている。【相原斎】

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