16年前のサム・ライミ監督版以来、スパイダーマンが登場する実写映画は8本を数える。いまさらのアニメ作品に決して期待値は高くなかったのだが、予想をひっくり返された。

物語はなんと、ご存じピーター・パーカーの死から始まる。「主役」が死んでどうなる! 後を継いで新生スパイダーマンとなったのが13歳のマイルス・モラレスで、その成長とピーターに死をもたらした闇の帝王キングピンとの戦いがこの映画の本筋となる。

超人力は1日にして成らず。マイルスのおっかなびっくりの手探りがほどよくリアルで、いつの間にか感情移入させられる。

CGの細密さが背景となるニューヨークの街並みをきりっと見せ、そこに重ねた手書きの柔らかさからキャラクターの心情がしっかりと伝わってくる。

キングピンは時空をゆがませ、世界をブラックホールに葬ろうとする。そのゆがみからは別次元のスパイダーマンたちがやってきて弱気のマイルスと共闘。次元をまたぐ世界観にアニメならでは、を実感する。「異次元ピーター」もいる変形スパイダーマンたち。ねっこりしたキャラにアメコミの原点を色濃く感じた。【相原斎】

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