星組公演のミュージカル「ベルリン、わが愛」新人公演は、4年目の極美慎(きわみ・しん)が抜てきされた。100期生初主演。宝塚大劇場は10月24日、東京宝塚劇場は12月7日。

  ☆  ☆  ☆  

 同期で最初のセンター。不安とともに責任感をかみしめた。「でも、宝塚の舞台は痛くない」と言い、笑った。幼稚園から中学2年まで、空手を習っていた。「殴られると、やっぱり痛い。あごに入ると、外れたかなってぐらい痛くて。ご飯、うどんも食べられないこともあった」と語る。

 「小さい頃からやんちゃというか、近くの道場で、空手着を着ている子が格好よく見えて、習いたい、と。新極真会。その道場訓から芸名をつけたんです」

 学生時代、神戸に住む祖父母宅へ来たついでに宝塚を観劇。「こんなに男らしくて輝いていて、背の高い女性がこの世にたくさんいるんだ」と驚き、魅了された。自身も中3時に身長は173センチあった。

 初観劇から半年後、受験して初めて「バレエが必要」と知った。不合格。バレエ、声楽などを基礎から習い、再受験で合格した。

 「当たって砕けても、へこたれないです。レオタードも受験のときに初めて着たので、本科生の方に着方を聞いたぐらい。入学後も、同期にバレエやダンス、教えてもらっていました」

 今作はスーツ物ゆえ、立ち姿で「男」を表現する。若手にはかなりの難役だ。

 「(本役のトップ)紅さんには、絶対的なスター性がある。でも私は、(男役として)もっともっと掘り下げないとできない」。必死に紅の姿を追う。

 「スーツでの立ち居振る舞い、目線、手の使い方、間の取り方、座り方、歩き方、娘役を見る視線…。1から100まで見ています。仲間を見る視線と、(相手娘役の)綺咲(愛里)さんを見る視線も違う」

 武器は長身。だが、指が「ひょろ長くて」男らしくないのが悩みで、指の筋トレにも励む。「温かい包容力のある男役に。さわやか系が似合うと言われますが、悪役もしたい。おとこ気があって、骨太な役を」。初主演を機に1枚、殻を破るつもりだ。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「ベルリン、わが愛」(作・演出=原田諒氏) 1920~30年代にかけてハリウッドと並ぶ映画の都として栄えたドイツ・ベルリンに、ナチスが暗い影を落とし始める。その最中、ミュージカル映画こそが新たな娯楽作と信じ、推進する「映画人」たちを描くオリジナル。

 ☆極美慎(きわみ・しん)7月26日、横浜市生まれ。14年3月入団の100期生。星組配属。15年9月のNHKドラマ「『経世済民の男』小林一三~夢とそろばん~」で、宝塚歌劇場面で再現された日本初のレビュー「モン・パリ」場面に出演。身長175センチ。愛称「しん」「カリン」。