雪組新トップ望海風斗(のぞみ・ふうと)が相手娘役に迎えた真彩希帆(まあや・きほ)は、歌、ダンス、芝居と3拍子そろい、存在感を発揮している。兵庫・宝塚大劇場で、本拠地お披露目作「ひかりふる路(みち)」「SUPER VOYAGER!」に15日まで出演。東京宝塚劇場では来年1月2日から2月11日までお披露目される。

 おしゃべりは大好き。そして、よく笑う。

 「みんなと時間がずれて(しゃべれないと)、倒れちゃうかと。でも今は、望海さんの笑顔を見て、毎日、頑張ろうって思います」

 芝居はフランス革命で貴族の身分を失う娘、マリー・アンヌを演じる。望海演じる主人公・ロベスピエールを殺そうと追ううち、ひかれあってしまう。セリフの裏を表現する難役だ。

 「一筋縄じゃいかなかった。お稽古中は何度も『セリフがすべてじゃない』と言われまして…。私はもう、うれしいならうれしい、悲しいなら悲しい。単純な人間なので(笑い)」

 望海からも「100か0(ゼロ)だね」と言われた。全力でぶつかるゆえ、壁に当たると落ち込み、見えなくなる自覚はあった。

 「(コンビ初作品の)前回も、望海さんから『いい意味で甘えて、頼って』と言っていただき、今回も救ってくださった。いつも、手を差し伸べてくださる方がいるんだって…」

 まだ6年目だが花、星、雪と異動。宙で初舞台を踏み、その後の組回りで月も経験。既に全組を知る。

 「周りに合わせる意識が強くなっていた。それでは真ん中に立つには弱過ぎる。根はポジティブではないけど、私できない-なんて言うのは(トップ娘役として)失礼。どの組にも、そんなトップさん、トップ娘役さんはいなかった。陰で泣いていても、強かった」

 強くないと自覚する「芯」を持とうと心がけ、客観的に自分を語る。5人姉妹の4番目。7人家族で母の合唱クラブなどを通じて、子どものころから大人と接する機会も多かった。

 「自己主張しないと埋もれちゃう。妹の幼稚園に行って年下の面倒を見るのも、公民館で大人と小生意気に話すのも大好きでした」

 コミュニケーション能力は磨かれたが、人前で弱みを見せるのは苦手に。「いつも笑顔で、楽しくしていないと、嫌われちゃうって」。しっかり者を装い、悩みに直面すると、部屋にこもり泣く少女時代だった。

 その頃、今なお「バイブル」という愛読漫画にであった。手塚治虫の「ブッダ」から包み込む愛を知り、「ドラゴンボール」から強敵に向かう精神を学んだ。

 「特に『ブッダ』は、人を『嫌い』で終わらず、その人の人生を理解をしていけば、いつかは相手を理解できるようになる。大きな愛で世を包みなさいって、最終回で言っていて」

 小学5年当時、実践。気まずかった友人に朝、笑顔であいさつを続けると、1週間後にあいさつを返してくれるようになった。

 「自分から人のことを嫌うのはやめようと思って、今も続けています。私がみんなのこと好きなので、その後はあまり、人間関係に悩むこともないです。漫画から学ぶことは多い。熱系、青年漫画が好きです」

 男役志望で最初は不合格。身長(164センチ)を考慮して、翌年、髪を伸ばして受験すると合格した。「宝塚にいられることが幸せ」。目標とするのは元星組トップ娘役で、中山秀征夫人の白城あやかだ。

 「毎朝(白城がヒロインの)『うたかたの恋』を見て学校に行っていました。かわいくて、かっこよくて、色気もあって、美しく、優しさ、包容力もある。私の思う頂点。七変化できる娘役が理想です」

 望海との新コンビでスタートしたばかり。新生雪組のテーマ同様に、真彩は「希望」に満ちた日々を走っていく。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~」(作・演出=生田大和氏) 18世紀末、フランス革命の中心人物の1人、革命家のマクシミリアン・ロベスピエールの半生を描く。宿願の憲法承認を得たロベスピエールは、パリ市民の歓迎を受けるが、理想を求めすぎ、恐怖政治の道を進む。彼が掲げた「自由・平等・博愛」への思いを探るミュージカル。

 ◆レヴュー・スペクタキュラー「SUPER VOYAGER!」-希望の海へ-(作・演出=野口幸作氏) 望海率いる新生雪組の「船出」を祝うレビュー。望海風斗、真彩希帆の新コンビ名から、新たな雪組テーマ「希望」がベース。

 ☆真彩希帆(まあや・きほ)7月7日、埼玉県生まれ。12年の宙組公演で初舞台。月、星の組回りを経て13年2月に花組。配属後初の本拠地作でソロ歌唱場面を得る。14年11月に星組、今年1月に雪組へ異動。ヒロインは新人公演1回、バウ2回。今年7月、咲妃みゆの後任として雪組トップ娘役に就任。身長164センチ。愛称「きぃちゃん」「まあや」「なっちゃん」。