前回に引き続き、冬ドラマから。大河ドラマは終わってしまいましたが、冬の連ドラは折り返し地点あたりですかね。個人的には「俺の家の話」(TBS系)に夢中です。クドカン節に久々で最後? のTOKIO長瀬智也とのタッグ。伝統芸能に加え、年代的に切っても切れない介護の話ありで興味深く見ております。

時々出てくるロバート秋山と西田敏行のやりとりが秀逸で、これぞ真骨頂といった気分であります。他には月9「監察医朝顔2」(フジテレビ系)や「恋つづ(恋はつづくよどこまでも)」(TBS系)でブレイクした上白石萌音の「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(TBS系)に「にじいろカルテ」(テレ朝系)、「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS系)あたりが、周りでは評判がよいですかね。

さて、今回はキャスティングの話。企画を立ち上げる際、イメージキャストなるものを作ります。脚本はこの時点ではまだできていないケースが多く、あくまでイメージです。そこで、少し嫌な感じになりますが、上位互換や下位互換みたいな言い方を、ついついしちゃいます。ざっくりと役柄やイメージでライン(性別や年齢、雰囲気や一般的な印象)なるものがあって、この人からあたって(オファーして)ダメだったら次にこの人と…。スポーツで言うと、このプレースタイルですかね。

何人もオファーをして断られた後に決まった場合、初めてお会いする時にどこか申し訳ない気持ちでいます。そこで改めて俳優にとって大事だなと思うのが、このラインを増やせるのかどうか。売れている人はきっかけの役があったりするのですが、その役以外に注目される役を作れるかどうか。スポーツと同じく複数のポジションをこなせた方がもちろん需要があります。

そこで今回取り上げるのは、ドラマ「にじいろカルテ」にて、高畑充希演じる主役の先輩医師を演じる井浦新(いうら・あらた)、46歳。作中では、後輩看護師に対して面倒な絡みが多く、いい意味で雑な印象の役を好演中です。

谷健二氏が描いた井浦新の似顔絵
谷健二氏が描いた井浦新の似顔絵

最近の代表作は、米津玄師の「Lemon」効果もあり、ヒットした18年のドラマ「アンナチュラル」(TBS系)の法医解剖医・中堂系役。それまでスマートなイメージが多い中、かなりクセのある役を演じきる。

「メンズノンノ」のモデル(当時の芸名はARATA)としてカリスマ的人気があり、その後、是枝裕和監督の映画「ワンダフルライフ」(1999年)で俳優デビュー。以降、コンスタントに映画に出演。当時の芝居はどこか控えめな印象でした。是枝演出の印象が強いのか、演じているというより素に近い感じですかね。

映画俳優に多くあるように芸術性の高い作品のみと本数を絞っていくのかと思いきや、そこから意外と本数が増える。12年の小栗旬主演「リッチマン、プアウーマン」(フジテレビ系)あたりからは民放の連続ドラマにも出演し、さまざまな役を演じて人気俳優の地位を築く。

そして、ひとつの転機が訪れる。俳優として育ててくれたと公言する鬼才・若松孝二本人を、18年の映画「止められるか、俺たちを」で演じることとなる。それまで繊細な役が多かったところ、実際に行動を共にした若松監督の大胆さが乗り移ったかのように、これまでの役とは違い新たな一面を見せてくれた。

そして、そのイメージは「アンナチュラル」の中堂役へと続いていく。さて「にじいろカルテ」ではどこまで魅せてくれるのか?今後、最も楽しみな俳優さんの1人です。(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)

「にじいろカルテ」に出演する井浦新(2021年撮影)
「にじいろカルテ」に出演する井浦新(2021年撮影)

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。20年11月28日には最新作「渋谷シャドウ」も公開。