佐藤浩市(54)が20日、東京・丸の内ピカデリーで行われた主演映画「愛を積むひと」(朝原雄三監督)の初日舞台あいさつで、妻(氏名、年齢非公表)からの手紙に男泣きした。劇中で、主人公の篤史(佐藤)を残し、亡くなった妻良子(樋口可南子)が、死後のことを予見して、いくつもの手紙をしたためていた映画の内容を踏まえ、サプライズで披露された。

 「浩市さん。心臓が飛び出るくらいビックリしている事と思います。スミマセン…。私はこの作品を観るのが、今日で3回目。きっとまた、客席で号泣していると思います。もし自分が夫より先に旅立つことになったら、ふとそんなことを考えてしまいました。良子さんのように大きな愛を持ったウソを、浩市さんや息子たちに突き通せるでしょうか? 最後まで、あんなに強く凜としていられるでしょうか? 罪を犯した若者を、大きな愛で許せるでしょうか? そして、自分がいなくなった後を想像し、あんなに優しい手紙を書く事ができるでしょうか? 私には、とても自信がありません。結婚した当初、身体があまり丈夫でない私は、『自分が死んだら、保険金で、好きな映画を作ってね』と、あなたに言ったことがありました。勿論、当時は、まだ若く、死という存在が遠くにありました。でも、自分が浩市さんよりも、先に逝ってしまうような気がしたのは、本当です。今の私は違います。篤史さんと似ていて、役者の仕事しかできない浩市さん。あなたを残して旅たつ事は、家族は勿論、事務所のマネージャーさん、映画関係者の皆さまに、とてつもないご迷惑をおかけする事になり、それを思うととても、先に逝くことなどできません。この作品を通じて、命には限りがあるということを、痛感しました。当たり前の日常が、突然無くなる事もあるということも。その時、後悔しないように、健康を大事に、大切な家族や大切な方達との時間を、丁寧に過ごしたいと思います。23年前に浩市さんから頂いたお手紙にあった『僕は一生あなたの味方です』ということばを、今も忘れません。私の一番の味方は、浩市さんです。だからどんな困難も乗り越えていけます。これからも、家族でいろんな形の愛を積み上げて、沢山の笑顔につなげていきましょうね。『愛を積むひと』は、ご夫婦は勿論、恋人達、子どもの立場から、そして迷える若者と、幅広い層のお客さまの心に残る作品だと思います。1人でも多くの方に観ていただいて、もう一度、大切な方と人生を見つめ直す、ひとつのきっかけになるといいな、と思います。浩市さん、私は浩市さんを1人にしないように、浩市さんよりも1日でも長く生きる事を、約束します」(原文まま)

 樋口が涙ながらに手紙を朗読すると、佐藤も涙を流し、客席に背を向けて涙をぬぐった。娘役の北川景子(28)も、目に涙を浮かべた。

 野村周平(21)杉咲花(17)吉田羊(年齢非公表)柄本明(66)も登壇した。