演歌歌手吉幾三(64)を取材した。

 3日間の地方ロケから帰京直後、ロケに同行したあばれる君(30)とツーショットでの囲み取材だった。

 御年64歳、さすがに疲労の色が見えるかと思いきや、元気いっぱい楽しそうにあばれる君をいじっていた。お笑い芸人に任せず、取材の場を盛り上げようとする姿に、親近感を抱いた。

 取材会後、吉は、ロケメンバーで飲みに行く予定となっていた。

 スタッフらより一足早く取材会場を出ると、移動車のドアを開けて待っていた若いスタッフに「俺はいいから、みんなで乗って」と言い残し、1人スタスタと歩いて行ってしまった。「芸能人だから」「大御所だから」と、特別扱いされるのを好まないのであろう。あまりにも町になじんだ姿に、それが吉だと気づく人はいなかった。

 以前ある番組で、お人よしで有名なANZEN漫才のみやぞん(32)のドッキリ企画を放送していた。「移動車がスタッフで満員だから」という理由で田舎道に放り出され、4キロの道のりを歩かされるというものだった。

 ありえない設定ながらも徒歩を快諾するみやぞんの姿に、「いい人だな」と感心した記憶がある。しかし吉は、自ら車を譲るという、みやぞん以上のジェントルマンっぷりを見せてくれた。

 その謙虚な姿勢に、息の長い芸能生活を支えるものを見た気がする。