北島三郎(81)の次男で、ミュージシャンで作曲家の大野誠さんが自宅で亡くなった。

 51歳だった。閑静な住宅街の一戸建てを借りて1人暮らしをしていたが、親族が連絡が取れず、警察立ち会いのもと自宅を訪ねると亡くなっていた。

 本件について周辺取材を担当したが、複雑な思いだった。というのも、私自身2年前、脳出血を発症した。たまたま取材中だったのが不幸中の幸いだった。取材後の連絡をした際、まったく話せなくなっていた。異変に気付いたデスクの好判断で医者にいったおかげで、今こうして生きている。もしあの時、「体調が悪いなら帰っていい」と指示されていたら、最悪、この原稿も書いていないかもしれない。そんなことを思い出していた。私も訳あって独り身のため、孤独死してもおかしくなかったことを改めて実感するとともに、なんの障害も残らずこうして働けていることに感謝している。

 また、周辺取材をする中で、地域社会が崩壊しつつあることも実感した。大野さんが住んでいたのは歴史有る住宅街。近隣住民に話を聞くと、その周辺でも最近は誰が住んでいるのかが全く分からないという。古くから住んでいる人たちの子ども世代は家を出てしまい、高齢化が進んでいる。新しく引っ越ししてきた人たちは町内会には入らない。回覧板もあるが、拒否してる。私も地方出身者で、今住んでいるマンションにどんな人が住んでいるのかも知らない。町内会の会費はマンションの管理費として徴収されているが、町内会には無関心だ。心のどこかに「よそ者」感覚があるのも事実だが、最大の問題は「無関心」だと感じた。

 いろいろと身につまされる取材だった。