歌舞伎の海外公演が多くなった。今年も中村勘九郎、中村七之助の平成中村座がスペイン、中村獅童、七之助がパリ、そして中村鴈治郎と中村扇雀の近松座がロシアでの公演を予定している。

 400年以上の歴史を持つ歌舞伎だが、初めて海外公演を行ったのは1928年(昭3)と、昭和に入ってからだった。2代目市川左団次を中心に、ソ連公演を行い、世界的な演出家のスタニスラフスキー、映画監督のエイゼンシュテインが観劇し、絶賛したという。

 以来、歌舞伎の海外公演が行われ、これまでに米国、英国、フランス、イタリア、ドイツなど38カ国を数え、近松座のロシア公演で74回目になるという。オーストラリア公演が行われた時、現地の新聞が「歌舞伎は動く大使館」と書いたことがあり、その言葉が歌舞伎海外公演のキャッチフレーズにもなった。

 中村勘三郎とともにさまざまな国で公演を行ってきた扇雀は「演劇に国境はない。私もニューヨーク、ロンドン、ラスベガスで演劇を見ているけれど、負けたと思ったことはない。歌舞伎はすばらしい演劇だと思う」と自信をみせる。

 最近はインバウンド(訪日外国人客)が増え、歌舞伎を見に来る外国人の姿を見ることが多くなった。ただ、開演時間が歌舞伎座では昼の部が午前11時、夜の部が午後4時半と、多くの人が観光をしている時間帯になる。そのため、観光ができない夜時間帯の上演を求める声が高まり、20年の東京オリンピック開催を前に、上演時間の繰り下げも検討されている。海外の演劇都市では開演時間は午後7時半、8時というところが多いだけに、歌舞伎も世界基準を求められている。