戦後初の上方落語定席、大阪・天満天神繁昌亭に貢献したはなし家に贈られる「第13回繁昌亭大賞」が22日、大阪・上方落語協会会館で発表され、英語落語などで新規ファンの開拓に努めてきた桂かい枝(49)が選ばれた。

発表会見前に選考委員会が開かれ、繁昌亭で開かれる昼席を主に、貢献度などを審査。かい枝は昼席への出演量と演目の質、代名詞の英語落語などによる初心者のファンを増やす努力などが評価された。

かい枝は、94年に故5代目桂文枝さんに入門。97年から古典落語を英訳し、英語による落語公演を始めた。これまで世界の100都市以上で公演を開き、中学や高校の英語の教科書にも英語落語が取り上げられている。

受賞の喜びを「アメイジング・サプライズ」と表現し「やっと落語家として一人前と認めていただいた。我々世代でしっかりお客さんを呼べるように魅力ある落語をやっていきたい」と喜びを語った。落語ができる場所としての繁昌亭については「寄席ができて、上方落語家という職業が確立されたような気がする」と感謝の思いを明かした。

現在、1年で60~70の学校を回り、英語落語の披露している。「若い人に落語の面白さを伝えるということを特にたくさんやらせていただけている。その辺を武器にして『落語って面白いんだよ』と、(訪問した学校の生徒などの)お客さんを寄席の場に誘導できるようなことをこれからやっていけたら」とこれからの目標も話した。

同席した同協会の笑福亭仁智会長(66)は、かい枝ら周辺の世代を「個人的に期待できるような塊」と表現し「他の人の励みにもなって、塊として出てきてもらったらと、協会として期待している」とエール。若いはなし家へは「『繁昌亭に出ていることがプロなんだ』というプライドを持って」と期待の言葉をかけた。

現在、NHKで以前にアニメが放送されていた「昭和元禄落語心中」の実写ドラマが俳優岡田将生を主演に同局で放送され、人気を博している。

かい枝は、以前に繁昌亭で同アニメとコラボし、声優を呼んで大好評だったという新たな試みとなった落語会を振り返り「(落語に対する)印象の与え方で、(お客さんの)捉え方は変わるんだなと感じた。そういうものをうまいこと、定期的にでも利用できたら」と新たな可能性について言及。仁智会長も直近の会議で「昭和元禄-」の話題が挙がり「これは使わん手は無いで」という結論に至ったと明かし、繁昌亭での原画展などの開催を模索していると話した。

奨励賞には入門16年目の桂雀太(じゃくた=41)が選ばれた。副賞として、かい枝に20万円、雀太に10万円が贈られる。

来年2月20日には、受賞記念落語会と表彰式が繁昌亭の夜席で行われ、かい枝がトリを務める。来春には、繁昌亭の昼席でかい枝、雀太それぞれの受賞記念ウイークも開催される。

同賞は06年の繁昌亭開場を機に、当時の同協会会長だった桂文枝(75)が創設。受賞資格は入門25年目までのはなし家。