12日に心不全で亡くなった女優市原悦子さん(享年82)の通夜が17日、東京・青山葬儀所で行われ、竹中直人(62)阿部寛(54)宮藤官九郎(48)井川遥(42)ら約600人が参列した。親交があるゴダイゴのリーダー、ミッキー吉野(67)が追悼のピアノ演奏をささげた。市原さんは生前の遺言により、樹木葬で埋葬された夫の演出家故塩見哲さんの隣の樹木葬墓地で眠ることも分かった。

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通夜は無宗教式で、戒名はなかった。最初に代表作「家政婦は見た!」などのドラマ映像が10分間流された。弔辞の代わりにミッキー吉野が演奏したのは、市原さんと夫の故塩見哲さんが大好きだった「三文オペラ」の代表曲「マック・ザ・ナイフ」。吉野は「大好きな塩見さんと会っているのでしょうか。2人の姿を思い浮かべながら演奏します」とピアノに向かった。続けて、市原さんと共演した舞台「二人だけの舞踏会」のテーマ曲「夢とごはんの木」。塩見さんが作詞した曲で、ダンサーが祭壇の前で踊る、異例のパフォーマンスをささげた。

今月7日と亡くなる前日の11日に見舞った吉野は「7日は会話も出来て、治療でろれつが回らなかったけど、頭ははっきりしていた。急に『心臓の突き刺さる演奏をしてね』と言われ、帰る時に『大好きだよ』と言ったら、『愛してるわよ』と返してくれた。でも、11日は手を握っても反応はなかった」。

また、市原さんは遺言によって、樹木葬で埋葬されることが分かった。親族によると、葬儀について「緑の森の中で眠りたい」と話したという、祭壇は森をイメージして緑一色、ひつぎも淡いグリーンという。墓地も5年前に亡くなった塩見さんが眠る関東近郊の森の中にある樹木葬墓地の隣に用意した。

長く闘病生活を送ったため、「顔を見られたくない」と話し、埋葬も「暗い骨つぼに入るのも、コンクリートの墓も嫌。空の下でふわふわして眠りたい」と希望したという。

市原さんと塩見さんの墓を探すため、「里山ツアー」と称して千葉や東京の寺を一緒に回ったという吉野は「食事すると、結局、塩見さんの話になった。本当に塩見さんを愛していた」としのんだ。19歳で知り合い、61年に結婚後も舞台の同志で、流産で子宝に恵まれなかったが、いつも一緒のおしどり夫婦だった。

今日18日に同所で葬儀が行われる。ひつぎの中には著書「白髪のうた」や写真集、台本を読む時に使う眼鏡、愛用の手鏡などが納められるという。【林尚之】