東京・渋谷のシアターコクーンで上演されている岡田将生主演の舞台「ハムレット」初日(5月9日)で驚きの光景を見ました。カーテンコールで、ハムレットを演じた岡田が号泣し続けていたのです。

カーテンコールで、大きな拍手に主演者が感極まって涙を流す場面は何度も見てきましたが、今回は特別でした。カーテンコールで出てきた時から岡田は涙が止まらない様子でした。2度目に出てきた時には完全に号泣状態で、隣に立った共演の松雪泰子や黒木華に背中をトントンとさすられ、そでに引っ込む時も黒木の肩に顔をうずめて泣いているほどでした。3度目に出てきた時も同じ状態で、演出した英国人のサイモン・ゴドウィンがステージに呼ばれ、岡田と抱き合った時にも涙は止まりませんでした。

これまでもカーテンコールで涙を見せる主演俳優の姿を見たことはありますが、これほどの号泣は初めてでした。それだけ、岡田にとって、思い入れのあった舞台だったのでしょう。岡田は14年に蜷川幸雄さん演出「皆既食」で初舞台を踏みました。その時に蜷川さんから「いつかシェークスピアをやろう」と言われたのですが、蜷川さんが亡くなったため実現せず、今回、英国の気鋭演出家サイモンのもとで初めてのシェークスピア劇挑戦となりました。

稽古では一筋縄で行かないハムレット役に悩んだそうですが、パンフレットで岡田は「蜷川さんは『役の芯をとらえるために、もっといっぱい考えろ』」と言ってくれるんじゃないかな。今は迷路をさまよっている感覚ですが、試されていると感じる今を、幸福に思います」と話しています。そういう幸福感ある稽古を経ての本番初日に、達成感や安堵(あんど)などさまざまな感情が沸き起こったのでしょう。岡田にとって忘れられない初日になったようです。