19年は、松本白鸚(77)にとって充実した1年だったようだ。昨年から続く高麗屋三代襲名の地方公演を行い、10月には市川染五郎時代から50年にわたって演じ続けた主演ミュージカル「ラ・マンチャの男」も1300回を超えた。歌舞伎でも、初役だったり、久々の上演など、喜寿になっても、挑戦の心意気は変わらない。

また、天皇陛下の「即位の礼」に招かれ、「饗宴の儀」にも招待された。9日に行われた「御即位をお祝いする国民祭典」ではお祝いの言葉を述べる大役も果たした。黒のスーツ姿で登壇した白鸚は「新しい象徴として、私どもに寄り添ってくださることを、国民の1人として大変うれしく、また誇らしく思っております」と述べ、さらに「皇室という長い伝統を引き継がれる両陛下におられましては、現代の日本における国民の象徴として、両陛下らしい新たな息吹を日本の伝統文化にもお与えくださることと固く信じております」と続けた。

12月の国立劇場では、「盛綱陣屋」で佐々木盛綱を28年ぶりに演じる。白鸚は「何年ぶりというのは関係なく、お客さまが喜んでくださることの一点に集中したい」。若い頃に勉強会「木の芽会」で初めて盛綱を演じた。「父に加え、初代播磨屋(中村吉右衛門)の娘の母が一緒になって教えてくれた。当時は無我夢中でしたが、その頃の気持ちを忘れず、新鮮な気持ちを失わないように演じたい」と話したが、同時に上演される、チャプリンの名作映画をもとにした、長男松本幸四郎の「蝙蝠(こうもり)の安さん」に対抗心を燃やした。

「後ろの強敵(幸四郎)に負けないようにしたい」と話すと、幸四郎は「仲良くやりましょうよ」と苦笑い。親子といえども、舞台に上がれば、ライバルなのだろう。