10月11日付で退団を発表した宝塚歌劇団の雪組トップスター望海風斗(のぞみ・ふうと)が18日午前、大阪市内のホテルで退団会見を開き、決断から発表までの重みを語った。

「(宝塚は)人生の中で一番幸せだと感じているので、(退団を)決断するには勇気が必要でした。最後の日まで、男役を楽しんでいる姿をお見せしたい」

望海は03年入団。花組に配属され、劇団100周年にわいた14年に雪組へ組替え。17年7月に雪組トップに就いた。望海は「一生できるものではないので、2020年がひとつの区切りかなと思っていました」と、就任当時を振り返った。

退団を意識したのは、昨夏の前作「壬生義士伝」の本拠地・宝塚大劇場での公演中だった。

「組の仲間が舞台に立っている姿を見たときに、ものすごく皆が舞台に息づいている姿を見て、すごく心が震えた。すごく尊いものを見ているなという。涙がツーって出てきた瞬間があったんですよ。ものすごく幸せな気持ち、なんとも言えない瞬間がありまして」

その後、2月3日に宝塚で千秋楽を迎えた「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の上演が決まり「自分自身の夢としても、目指す男役の集大成がお届けできるんじゃないか」と考え、当初の想定通り「20年退団」を決意した。

組のメンバーには「一昨日伝えた」といい「組子もファンの皆さんも、次の演目が発表された時点で、覚悟はしていたみたいで…」。ただ「まず、私が、みんなに伝える数日前から『退団ブルー』に入りまして。言ってしまったら(退団へ)カウントダウンが始まるし…。なので、伝えるときに、みんなの顔が見えなくて、まず最初に私が泣きましたね」と照れながら、振り返った。

約17年の宝塚人生での転機のひとつには「組替え」をあげ、作品としてはトップ就任前年の地元・神奈川での主演作「ドン・ジュアン」をあげた。会見に同席した小川友次理事長も「(トップとして)すごくなるな」と予感したという作品。歌、ダンス、芝居、男役らしい立ち居振る舞いと、すべてにたけた望海が真骨頂を発揮した舞台だった。

「ほんとにやりきったというか、もう『これで退団しても悔いはないな』というぐらい(笑い)。まず第1次の(退団を告げる)鐘が…。それぐらい、毎日、毎日、生ききれました」

同時退団を発表した相手娘役に迎えた真彩希帆(まあや・きほ)には、退団を決めてから意思を伝えると、すぐに「私も一緒に退団していいですか」と返ってきたといい「一緒にスタートして、一緒にゴールを目指していくのはありがたい」と感謝。106年目の劇団史上でも、屈指の実力派コンビは、18年末の「ファントム」などで、圧巻の力量を発揮していた。

「(周囲の称賛に)甘えないように、ずっと走ってきた。退団する時まで、ともに成長していきたい」と話し合ったといい、“名相棒”とともに添い遂げへ向かう思いも吐露した。

小学生時代からあこがれ、愛してきた宝塚には「今までの人生、すべてが宝塚で、そのほかの道を知らない。そういう世界に出あえたことが幸せだったなと思います」と、あふれる愛ものぞかせた。

今後は4~5月には東京と神戸でコンサート「NOW! ZOOM ME!!」を予定。退団公演「ミュージカル・シンフォニア『fff -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~」「レビュー・アラベスク『シルクロード~盗賊と宝石~』」は、兵庫・宝塚大劇場は7月17日~8月17日、東京宝塚劇場は9月4日~10月11日。東京公演千秋楽をもって退団する。

退団後については「ずっと男役ばかりを追い掛けてきて、男役以外の私は想像できない。これからゆっくり(自身の気持ちと)向き合っていきたいと思います」と話していた。