ザ・ドリフターズのメンバーでタレントの志村けんさん（本名・志村康徳＝しむら・やすのり）が29日午後11時10分、新型コロナウイルス肺炎のため亡くなった。70歳。所属事務所が30日に発表した。「東村山音頭」「カラスの勝手でしょ」「アイ～ン」など数々のギャグを生み出し、国民的な人気タレントとして活躍した。葬儀・告別式は近親者で行う。

志村さんの遺族が30日、東京・東村山の実家前で取材に応じた。実兄の志村知之さん（73）は「高校を出てボーヤ（付き人）から始まって、一流の芸能人になった。一生懸命頑張ってきたから、ゆっくり休んでほしい」と声をつまらせた。

先月25日、息子の憲之さん（44）が中心になって開いた志村さんの古希祝いが最後の対面になったという。「麻布十番のいきつけのおすし屋さんで、10人くらいでやったんです。本人も喜んでました。その時が最後になってしまった」。来年古希を迎える知之さんの妻サヨ子さん（69）は、志村さんが祝いの席で紫色のちゃんちゃんこを着ていた思い出を振り返ると「『来年はこれを回そう。お前の番だ』と言っていたのに、かなわなかった」と悲しんだ。

志村さんは新型コロナに感染したため、入院中の対面は許されなかった。知之さんは「病院に行っても会えない。顔も見られていない」。火葬の立ち会いも骨を拾うこともかなわず、「遺骨になって、明日の夕方戻ってきます」。サヨ子さんも「コロナがこんなにひどいことになるとは。本人もさぞかし悔しいだろうと思う」と声を震わせた。葬儀は最小限の家族のみで行うといい、「コロナが静まった頃に、お別れ会をやりたい」と話した。

知之さんは、志村さんが大みそかの集まりで「『来年はNHK（朝ドラ）と映画（キネマの神様）があるから頑張らなきゃ』と言っていた」と振り返り、「（3兄弟の）一番下がこんなことになっちゃうとは」と弟の突然の旅立ちに涙を拭った。