シンガー・ソングライター長渕剛(63)が歌手AI(38)とコラボレーションをした新曲「しゃくなげ色の空」が9日に配信リリースされることが7日、分かった。女性アーティストとのコラボは初めて。新型コロナ禍の中で制作された同曲は、ゆったりとした曲調に“長渕節”の力強い言葉を乗せた曲に仕上がった。

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「日本に希望を撃ち込みたい。AIちゃん、力を貸してくれ」。

歌詞やメロディーなどがほぼ決まり、ボーカルを録音する際に“女子力”が必要だと感じた長渕。その時、頭に浮かんだのがAIだった。「デビュー当初からすごい歌姫が現れたと思っていた。いつか一緒に何か出来たらというのは何となくあった」。2人はともに鹿児島で育った。「時代は違うけど育った環境、土壌が同じなので、語らずして感性でどんどん詰めていった感じです」。

長渕から連絡を受けたAIは最初、「私がまさか一緒に歌うなんてめっそうもございやせんって感じでした」という。だが「聞けば聞くほど、歌詞の意味がどんどん伝わってきて、本当に素晴らしい歌」と感じ、曲の世界観に徐々にのめり込んでいった。

レコーディングは5月中旬、対コロナ対策でスタッフが防護服を着用する厳戒態勢で行われた。長渕は「AIちゃんは歌の世界の中にどんどん入っていったので、自由に歌わせました」。一方のAIは「歌ってみたらやっぱり長渕さん節が難しく、感じをつかむまで時間がかかりました」と“生みの苦しみ”を振り返った。そして「心を込めて精いっぱい頑張りました。とにかく一緒に歌えて光栄です」と続けた。

新型コロナへの恐怖と向き合いながらも、プライベートスタジオの庭に目を向けると、赤いしゃくなげの花が力強く咲いていた。「皮肉にも、今まで生きてきて、見たこともないほどに空はキラキラ輝いていた。鳥たちも帰ってきた」。死を意識することで生はより鮮明になると長渕は言う。「生と死は等価値。命には限りがあるけど、おやじや母親の正しかったことを紡いでいく喜びがある。そのヒリヒリ感をきちんと知ることで、生きるエネルギーに変えていくことができる。それを一緒に感じたい」。

長渕自身が「最初で最後」というコラボ。AIと歌うことで、より強くテーマを感じられる曲に仕上がっている。【川田和博】

 

◆長渕剛(ながぶち・つよし)1956年(昭31)9月7日、鹿児島生まれ。78年「巡恋歌」で本格デビュー。04年には桜島で、15年には富士山でオールナイトライブを実施。俳優としてもTBS系ドラマ「家族ゲーム」などで主演。今年、20年ぶりに映画「太陽の家」で主演。

◆AI(あい)1981年(昭56)11月2日、米ロサンゼルス生まれ。鹿児島出身。00年11月「Cry,just Cry」でデビュー。05年に「Story」が大ヒット。同年末、NHK紅白歌合戦に初出場。16、17年と計3回出場している。今年でデビュー20周年を迎える。

◆しゃくなげ ツツジ科の植物。派手で大きな花が特徴。花の色は赤、白系が多い。葉には毒性がある。花言葉は「威厳」「荘厳」。

○…長渕はAIを絶賛する。「AIというアーティストの存在は日本にとって、現代を生きる希望。あの天性の性格とキャラクター。それから声質と歌唱力。あの人の声は下を向かない。聞いている人たちが常に上に向かう。日本にとってはかけがえのない、希望の明かりを唯一ともせる声を持っている人」と期待を寄せている。