竹中直人(65)が3日、都内で行われた監督作「ゾッキ」公開記念舞台あいさつ後、取材に応じ、3月24日に老衰のため、88歳で亡くなった田中邦衛さんを悼んだ。竹中にとって「小学1、2年から見ていた、ずっと憧れの存在」で、1987年(昭62)の映画「私をスキーに連れてって」で唯一の共演を果たした。竹中は敬意を込めた得意のモノマネを交え「邦衛さんが、自分の魂の一部にずっと刻まれている」と、かみしめるように語った。

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竹中は田中さんへの思いを語り続けた。「寂しい。誰もが死ぬわけですから受け止めなきゃいけない。あんなたたずまいの俳優も、あんなしゃべり方する人もいない。ずっとひかれていた」。小学生の頃からファンで「おしゃれさ、服の着こなし、圧倒的テンション…憧れの人しかモノマネはやらない」とも口にした。

「私をスキーに連れてって」では、田中さんが演じた総合商社でスキー用品を開発する元プロスキーヤーの方針に反対する部下を演じた。にらみ合うシーンも演じたが「恐れ多い。共演なんて言えない。もっと芝居でガッツリぶつかり合いたかった」と謙遜した。

それ以上に記憶に残っているのが、出演した96年の映画「Shall we ダンス?」を田中さんが絶賛してくれたことだ。取材を終え乗ったエレベーターの扉が開いた瞬間、田中さんが立っており「おぉ…竹中! 見たよぉ。最高だよ! 面白いな、お前」と褒められたという。

竹中は田中さんの口調をマネて賛辞を再現し「邦衛さんが、ものすごく僕を受け入れている感じのメッセージが、今も焼きついている。認めてくれたという意識があった」と、昨日のことのように熱く語った。

それが田中さんと会った最後となった。共演も1度限りとなり、「本当に縁がなくて。とても残念」と語るが「芝居をやっている時でも、存在が自分の魂の一部に、ずっと刻まれている」。竹中にとって田中邦衛さんは、この先もずっと憧れの存在であり続ける。【村上幸将】