退団公演「アウグストゥス-尊厳ある者-」「Cool Beast!!」で、宝塚の娘役として最後の舞台に臨んでいる花組トップ娘役、華優希。宝塚音楽学校時代からの理想の娘役像は、男役を立てる「かすみ草」。それを追求し続ける姿に、演出家も感服する。

「アウグストゥス-」演出の田渕大輔氏は、兵庫・宝塚大劇場での公演を見ても、感心しきりだった。

「ひじょうに頭がいいというか…。宝塚はご存じの通り、全員が女性。男役に対して、娘役の(より女性らしさを極めた)ポーズが必要になる。リアルではないものをやる中で、その世界の中で何を目指したいかが、よく分かる。目的に向かって、直線的に信じて進む勘の良さを感じます」

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男役をよりすばらしく見せるために娘役は存在し、結果として両者が輝く-。そんな娘役像を華は追い求めてきた。最後の芝居では、父の敵討ちを誓って進むヒロインを演じるが、トップ柚香光演じる主人公に心が浄化されていく展開だ。

「(柚香とは)卒業だから-という話はしなくて、今まで通りに…。これまでも、ほんとにたくさんのことをご指導いただき、稽古を進めてきました」

相手が求めることを理解し、表現する術にもたけている。娘役は、まさに天職か-。柚香とはトップ就任前から、「はいからさんが通る」で相手役を務め、その再演で、トップコンビお披露目も経験した。

「今回は、今までと違って、魂でつながったような関係性を演じさせていただいています。私としては、愛し合う役もほんとに幸せだったんですけど、最後に、今までとは違う“根底の部分でつながりあえる”関係性をさせていただけて、ありがたいです」

話し方も、決して早口でも、勢いがあるわけでもない。だが、ゆっくり、落ち着いた口調の中に強い「芯」を感じさせる。今回の敵討ちにまい進する役柄にも共感を覚える点はある。

「ひとたび『こう』と思ったらすぐ行動する。今の時代そのものがそうですけど、何が正義で、何が間違っているのか。分からない中でも、自分の正義を信じて突き進む。一度、信じたものは、信じ続けられるところは共通点でしょうか」

心はぶれない。今作のショーを演出する藤井大介氏も「とてもかわいらしい。でも芯の強さもある。器用なタイプではないので、努力を怠ることはしない人」と長所をあげた上で、こう続けた。「だからね、人を絶対にいやな気持ちにさせないんですよ」。【宝塚担当・村上久美子】

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