シンガー・ソングライター平井堅(49)が、デビュー25周年のラストデーとなる12日に、約5年ぶりのオリジナルアルバム「あなたになりたかった」を発売する。あいみょん(26)とのコラボ話から、最近の音楽業界と自らについて、日刊スポーツの独占インタビューで語った。【聞き手=大友陽平】

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今回のアルバムには、「ノンフィクション」「僕の心をつくってよ」「知らないんでしょ?」などのシングル曲とともに、昨年3月に発表した配信曲「怪物さん feat.あいみょん」も収録する。これまで安室奈美恵さんとの「グロテスク」など、コラボでも話題をさらってきた。

「あいみょんとのコラボは、楽しかったですね。コラボレーションって、すごく好きなんですけど、生意気な言い方をすると、僕にとっては曲を作って、一緒に歌って、ミュージックビデオもつくって、ビジュアルも込みで『この人だ!』という一目ぼれ感があった人とやらせてもらっています。彼女の存在を初めて知った時にもビビッと来ていて、そういう気持ちと、その彼女にこの歌詞を歌って欲しいとプロデューサーっぽくこの『怪物さん』という曲に取り組みました。歌入れも全部立ち会ったんですけど、ブースに入って彼女が歌ってくれた瞬間に『聞きたかったのはこれだ!』というのがありました。すごくいい経験、出会いでした」

これまでも自らを「歌バカ」と称するほど、大の音楽好き。あいみょんをはじめ、14年12月の「Ken’s Bar」では、当時ブレーク前だった米津玄師の「アイネクライネ」をカバーするなど、常に最新の音楽にも目を向けている。「特技=目利きで打ち出すつもりはないですよ」と笑いながら、最近の音楽業界についても聞いてみた。

「最近のサブスクチャートとか、『Apple Music』の『J-Pop Now』とかはよく聞いているので、曲単体でいいなと思うのはすごくありますね。最近は、THE CHARM PARKさんとか、佐藤千亜妃さんの「カタワレ」も良い曲ですね。本当はもう少しアーティストに着目しないといけないんですけど、サブスク時代になって、楽曲単体で評価されることになってしまって…。もっとアーティストの顔を見たり、アルバム単体でちゃんと消化しないといけないんですけど、楽しんでます」

本来であれば、昨年はデビュー日の5月13日に地元三重でライブ、さらに同10月からは全国ツアーも開催予定だったが、コロナ禍で白紙になった。表舞台での歌唱は、12月の「Ken’s Bar」の配信ライブのみで、歌番組にも出演せず。音楽業界も様変わりする中で、少し距離を置いたことで、気付いたことも多かったという。

「ファンの皆さんには申し訳ないなと思いつつ、予定してたものが立ち消えて、年末にテレビに出て…というのも去年はなかったので、初めて当事者ではなく傍観者として音楽番組も見られて、すごくおもしろかったし、平井堅という歌手の立ち位置が分かることもありました。極端な話、1週間前と今が違うくらい、今はすごい速度で業界も変わっていると肌で感じています。僕らみたいな年寄りがサブスクチャートの100位以内に入るというのも大変で、厳しい時代だなとも思いますが、目前の曲をヒットさせることも大事だけど、平井堅という歌手の価値みたいなものはそれだけじゃないのかな、と。価値を長期で考えられるようになったかなと思います」

平井自身も「曲単体で聞かれる時代にアルバムという枠って必要なのかな?」と自問自答しながら、あえてアルバムという形で表現することにこだわった。

「優等生発言になりますが、今回のアルバムも一生懸命作りました。過去の作品は、僕の財産であり宝物だけれど、過去のものに手を加えることはできないので、平井堅という歌手の価値をより良くするためには、楽曲の精度を上げることしかないと思っています。今回も1曲1曲、本当にこの言葉でいいのか? このメロディーでいいのか? というのを、妥協することなく作りました。それしか、自分の価値を担保するものはないですし、それが全てだなと思っています」

再び、ファンの前でステージに立ち、美声を響かせる日も、きっと近いはずだ。

「緊張するし、気が小さいし、苦手だし、本当はコンサートをやらない方が気が楽なんですけど…(苦笑い)。大変なんだけど、大変だなって汗かきながら歌うという人生を、自分は選んだので…。また、立ちたいなと思います」

 

 コロナ禍で「おうち時間」が増える中、私生活では新たなことも始めたという。「それまではシャワーで済ませることが多かったんですけど、入浴するようになって。それまで体温が35度ジャストくらいしかしかなかったんですが、平熱が36・2度ぐらいになって、やっぱり大事なんだなって思いました(笑い)」。さらに、毎朝白湯(さゆ)を飲んだり、瞑想(めいそう)をして心を整える時間も作っているという。「幸せになるために…と思ってやってます。でも相変わらず、精神はそんなに安定してないんですけどね(笑い)」

◆「あなたになりたかった」 前作「THE STILL LIFE」から約5年ぶりで、平井にとって10枚目のオリジナルアルバム。TBS系ドラマ「小さな巨人」主題歌の「ノンフィクション」、あいみょんとのコラボ配信曲「怪物さん」などシングル表題曲8曲をはじめ、「1995」など書きおろしの新曲5曲を含めた全13曲。12日にはミュージックビデオ集も発売する。

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