デーブ・スペクターが、放送プロデューサーとして日米を橋渡しして25年の経験で培った独自の視点から、東京五輪を斬った。

コロナ禍による1年の延期を経て、1兆6500億円に上った経費を「使いすぎ」、開閉会式についても「レベルが低いどころか演出がない。マイナス50点」とダメ出しした。一方で、熱戦を繰り広げつつ、選手村の中からSNSで発信を続けたアスリートに「救われた」大会だったと総括した。【聞き手・村上幸将】

▼開閉会式 アイデア不足で、まるで小さな大学の文化祭…あきれたよ。開会式のピクトグラムも、他に何もないから評価されただけで「欽ちゃんの仮装大賞」じゃないんだから。日本の格好良さも文化も表現できていない。閉会式もひどい。ゴジラもロボットも出てこない…せめて忍者は出さないと。東京音頭の盆踊りでは、やぐらも建てないんだから。現職のテレビの演出家に発注すべきだった。紅白歌合戦の舞台美術を行うNHKアートに頼めば、小林幸子の巨大衣装くらいの演出は出来た。(期待の声もあった)マツケンサンバをやった方が楽しかった。採点はマイナス50点。でもパフォーマーや裏方の皆さんに罪はないし…0点かな。

▼選手が救い すごく良い試合もあり、選手の頑張りで救われた大会…感謝しなきゃいけない。その上、リオ大会から5年たち、SNSが普及して選手、マスコミが選手村や競技場から自ら発信、実況するようになったのが大きい。管理が厳しいIOCもコントロール出来なくなり、寛容にならざるを得なかった結果、選手が自発的に日本人は親切だったと発信した。競技、発信双方で選手が主役となった初めての大会じゃないか? 海外メディアもコンビニ、おにぎりや山崎パンの「ランチパック」や森永製菓の「チョコモナカジャンボ」が素晴らしいなどと、日本をPRした。経済効果は何百億円じゃきかない。

▼総括 コロナに感染し戦わずして帰国した有力選手もいたけれど、デルタ株の感染が拡大した中、最後までやりきった…それを評価すべきかは微妙だけど。飲食店を悪者扱いしているけれど、市中感染の方が多いんだから…本当に飲食店の人はかわいそう。やり切った一方で、最後の閉会式の途中で九州、関東が台風に見舞われた。そこに僕は1つのメッセージ性があると思う。福島第1原発事故後“復興五輪”とうたいながら、実際は“復興五輪”でも何でもなかったけれど、閉会式の途中に台風で被害が出ていた。日本は天災が多く、五輪を開催しにくい国という、強いメッセージになったのではないか。

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