野球人気復活を目指し、芸人らが立ち上がっている。元高校球児で、吉本興業所属のお笑いコンビ、トータルテンボスの藤田憲右(45)もその1人だ。

今年はエンゼルス大谷翔平らの活躍で盛り上がりを見せている野球界だが、実は小学生年代の野球競技人口は10年前の約3分の2以下まで減少。芸人活動の傍ら、野球教室開催や指導者ライセンス取得など競技普及にも汗を流す藤田に、その思いを聞いた。

日本が長い歴史をかけて積み上げてきた野球人気が落ちてきている。

藤田は「大谷選手の活躍で少しは盛り上がりを見せてますが、プレーヤーが増えるという点では、男の子はそれほど増えていないのかと思う」と危機感を口にした。

近年の子どもの競技人口は減少傾向にあり、少子化も相まって、地方などでは部活動で9人1チームすら集まらない学校も出てきている。藤田も小学5年になる長男が少年野球に励んでいることもあり、そうした実情を肌で痛感した。

「野球は見るのも楽しいけど、プレーしたらもっと楽しいスポーツです。まずは子どもたちに『野球って面白そう』と思わせることが大事だと思っています」。

子どもたちに野球の「楽しさ」を伝える。そうしたコンセプトのもと、19年からは吉本興業と協力して小学生向けの野球教室も始めた。第1回では同じく高校野球経験のあるココリコの遠藤章造、とにかく明るい安村、おばたのお兄さんら野球好き芸人に加え、現役プロ選手の福留孝介、牧田和久、上田剛史らも参加。「芸人には楽しさ、プロ選手には技術指導と、お互いの長所を生かすことができるのでベストな組み合わせ」と語り、キャッチボールをはじめ、打撃や守備、投球指導などを実施。野球離れが進んでいる理由のひとつに「指導が厳しく、楽しくない」といった声があることから「とにかく野球を楽しめる」ことを徹底し、その魅力を伝えた。

藤田は子どもたちの様子について「普段のチームとは違ってのびのびと楽しくやっている印象でした。子ども同士の打ち解けるスピードの早さや、その中で自らバントする子も出てくるなど、驚きもありました」と振り返った。

実施後には事務局宛てに子どもの保護者からお礼のメッセージも届いた。「実績のある方々から褒められ、自信につながったようです」といった声のほか、野球の面白さを見失っていたという子どもの保護者からは「今日の野球教室がとても楽しかったみたいで、中学でもっとうまくなって甲子園に出てみたいという目標ができたみたいです」という声もあった。

藤田は「子どもたちに必要なのは楽しさと、確かな技術指導。この2つがあれば野球の裾野は広がっていくと思います」と力を込める。

野球教室はコロナ禍などで中断を余儀なくされていたが、11月26日に第2回を実施することも決定。「Yoshimoto Enjoy Baseball~とにかく野球を楽しむイベント~」と題し、藤田のほか、元中日の石川駿も招いて東京・ベースランド新木場で再び小学生向けに行う。

藤田は第1回開催後に日本野球連盟の指導者ライセンスも取得。パパコーチとして少年野球の練習にも出ており「指導者ライセンスも取得して、万全の態勢で臨める」と意気込む。子どもの野球経験は問わず、参加者はイベントホームページ(https://enjoybaseball.yoshimoto.co.jp/)で11月23日午後3時まで募集中だ。

藤田は最後に「野球はうまいチームではなく、より考えて動くことができるチームが勝つスポーツです」と話し「監督やコーチに言われて動くのではなく、失敗してもいいので子どもたちの意志で考えて、もっと自由に動いて練習や試合をしたら強いチームになります。大人はどうか教えることはあまりしないで、その分、導きを多くしてあげてください。小学生はとにかく楽しみながらうまくなるのを目指して頑張ろう!」と呼びかけた。