長渕剛(65)が3日、神奈川・よこすか芸術劇場でアコースティックツアー「REBORN」(リボーン)をスタートさせた。コロナ禍で約2年ぶりとなったライブに、生まれ変わりや再生を意味するタイトルを付けた。密や飛沫(ひまつ)を避け、長渕1人がギター1本で聴かせる選曲となった。

待ちわびた満員のファンが詰め掛けた。ただマスク着用厳守で、ファンは定番の剛コールを封印した。オープニングから、長渕の1つ1つの言葉やギターの音が観客の心に染み込んだ。長渕が求めた「心のこぶしがゆっくり地の底から湧き上がって来る」ように聴き入った。

長渕は曲間で「夢じゃないよね。やっと会えたね。グッときたよ。恋人同士のようだね、俺たち。2年ぶりぐらいだから。本当に会いたかったな」と語りかけた。そして会場を見回し「奇妙だよね。俺だけマスクしてないの。でも、叫びたい衝動を抑えて、今に見てろよという底力が沸いて来るような、そんな時間を作れたらと思う」と話した。途中「(感染防止対策の中でも)ハミングはいいんだよね」と、観客にハミングを求めるシーンもあった。声を出せないため、観客から曲間に次の歌唱を促す手拍子が起きた。長渕は「いいね。新しいスタイルだね」と喜んだ。

「久々の再会だから」と、「泣くな泣くなそんな事で」(93年)や「六月の鯉のぼり」(12年)など懐かしい曲を並べた。世界中を覆ったコロナ禍の闇を表現するかのように、日食の演出を背景に歌った。最後は新曲「REBORN」を初披露。「人生につまずいたり、打ち負かされても、人間は必ず復活できる」とメッセージを込めた。

今回のツアーは、この日を含め関東で5会場6公演が行われるが、関係者は「年が明けたら全国を回りたい」と話した。

「幸せとは誰かに必要とされていることだと思う。自分ひとりのエネルギーで生きていくのは限界がある。みんなのために、喜んでもらうために歌いたい。毎日一緒にいられないけど、歌を共有して、たくさんの拍手を受けられたら、生きていて良かったと思う」としみじみと話した。

ファンはルールを守り、絶叫コールの代わりに、スタンディングオベーションを続けた。長渕のギター1本での、魂の叫びに聞き入った。長渕とファンが一体となって生まれ変わったかのようなライブだった。【笹森文彦】