田中泯(76)が24日、都内の日本外国特派員協会で主演映画「名付けようのない踊り」(犬童一心監督、28日公開)の会見を開いた。

質疑応答の中で、映画の終盤で波打ち際で踊る中、堪えきれなくなって倒れ込むシーンについて「無の境地か?」などと質問が出た。田中は「まず…無というのを、僕は信じていない。そういう境地になりたいと思っていません。死ぬ直前まで大騒ぎしていたいし、そういう境地にたどり着きたいって思わない」と吐露した。さらに「破裂するくらい感覚を満たして満たして世界…人間だけじゃないです。バクテリアを含めたら大変なことになる。世界と触れ合って生き続けたい」と力を込めた。

映画は、田中が2005年(平17)の映画「メゾン・ド・ヒミコ」への出演オファーをきっかけに交流してきた犬童監督を、ポルトガルでの公演に誘ったことから始まった。同監督は、17年8月から19年11月まで3カ国33カ所で踊りを披露した田中を撮影。田中は「1回、その場限りで成立するようにして2度、同じことはやらなかった。要するに生きているということ。スタートもなければカットもない。それが特徴」と笑み交じりで紹介した。

犬童監督は「ポルトガルは僕も行ったことがなくて行くと返事をした。近づくに連れて、泯さんの踊りを撮らないと、もったいないと、8つのダンスを撮った15分の短編が、素晴らしいダンス映像になった。これは、2時間くらいの映画になると思った」と製作の経緯を語った。その上で「1つ、大事なのは撮影中、インタビューしなかったこと。どういう踊りをするんですかと聞かず、ただ撮って(撮影した踊りを)勝手に組み直した」と語った。あえてインタビューしなかった理由については「インタビューすると、言葉で説明されそうなのが怖い。ダンスのことに関しては、1回も聞かないようにしていました」と振り返った。

上映後、行われた会見は質疑応答が盛り上がり、午後8時14分に司会から「最後の質問」と声がかかったが、田中が「ボス、これを、延ばす可能性ってないんですか?」と制し、延長となった。田中は会見の最後に「いくらでも、この映画で踊りのディスカッションが出来る。死ぬまで、そうして時間を使いたい」と声を大にして語った。会見は15分延長され、同39分に終了した。