香西かおり(58)が15日、東京・築地本願寺でデビュー35周年記念曲「恋街しぐれ」(16日発売)の発表イベントを行った。同寺には昨年10月に亡くなった恩師の作詞家・里村龍一氏(享年72)が納骨されている。里村氏は作曲家の聖川湧氏(78)とのコンビで、香西のデビュー曲「雨酒場」や「流恋草」など数々のヒット曲を手掛けた。「恋街しぐれ」はそのコンビによるもので、里村氏の遺作でもある。香西は「会いに来ましたよ」と納骨堂に献花して発売を報告した。

新曲は、別れた人への未練をお酒で紛らわす女心を歌う。香西演歌の原点のような作品だ。「10代からの知り合いなので、本当は遺作でなければ良かった。生きていてくれれば良かったと思います。いつも好きなお酒を飲んで、お酒の作品をいくつも残してもらった。35周年で先生の歌を歌えるのはご縁だなと思います」と話した。

デビュー曲「雨酒場」の歌い出しは、手酌でお酒をつぐたびに涙の落ちる音がする、と書いた。里村氏にしか書けない出色の歌詞だった。新曲も同氏独特の世界観が広がる。香西は「私の歌は8割が涙とお酒なんです(笑い)。(新曲は)デビュー当時の先生方の作品なので、悲しみだけでなく、ホッとしたメロディーで伝わる、香西ならではのメジャー演歌と思います。ファンの方も、そこを待っていてくれたと思います」と話した。

里村氏の綾子夫人とともに献花に同席した聖川氏は「香西さんは35年たっても変わっていません。唱法がしっかりしています。先日、『雨酒場』を聞きましたが、デビュー当時からまったく変わっていない。歌手の中には年月を経ると、崩して歌う方もいるが、香西さんの唱法は全然変わっていません。保てることはすごいことです」と評した。

コロナ禍で、香西も他の歌手同様、約2年間、歌う機会が激減していた。それでも体幹トレーニングと筋トレを欠かさず、歌える日に備えて来た。今もデビュー当時のドレスが着られるという。「やっと中止、中止という声が少なくなって来ました。人前に立って歌えるのはうれしいです。しばらく会えなかったですし。想像もできないことが起きる世の中になっていますが、もう1度自分自身を見詰め直し、とにかく元気で、いい歌を聴いていただけるように歌いたいです」と誓った。【笹森文彦】

◆香西(こうざい)かおり 1963年(昭38)8月28日、大阪府生まれ。11歳から民謡教室に通い数々の大会で入賞。民謡歌手としてシングル3枚を発売後、88年に「雨酒場」で演歌歌手デビュー。92年の「無言坂」で第35回日本レコード大賞を獲得。身長156センチ、血液型B。