狂言師の野村萬斎(56)が5日、都内で出演、演出を手掛ける「能 狂言『鬼滅の刃』」の制作発表会に出席した。吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏による人気漫画「鬼滅の刃」が原作の能狂言。野村は鬼舞辻無惨、竈門炭十郎、天王寺松右衛門の3役で出演するほか、演出も担当。この日は鬼舞辻無惨をイメージした、白い着物で登場し、原作について「鋭い絵の素晴らしさが目に飛び込んできて、日本に根差したストーリー展開だった。鬼が主題になっていて、能や狂言の世界に近いなという印象」と話した。

「鬼滅の刃」の世界観と能狂言の世界観の親和性について野村は「今も鬼いません? コロナも鬼かな?」と笑いを誘いつつ、「鬼になる因果があるからこそ、因果にスポットを当てたのが能であり、人は鬼で、鬼の方が人間らしいというのを見せるのが狂言。閉塞(へいそく)感を打ち破る何かを能狂言と『鬼滅の刃』で打ち破れれば」と話した。

また、この日誕生日を迎えた野村にケーキとブーケが送られた。抱負を聞かれると「この『鬼滅の刃』をはじめ、新しいことをやりたいと思います」と話した。

この日は監修と下弦の伍・累役を務める、能楽師で人間国宝の大槻文藏、竈門炭治郎、竈門禰豆子(ねずこ)を演じる大槻裕一、補綴(ほてつ)の木ノ下裕一も出席。大槻文蔵は「今までの能とあまり変わらないと思われたら心配」と笑いつつ、「少なくとも能の世界が広がる一歩を作っていければ」と意気込みを語った。

木ノ下は「吾峠先生が伝えたかったのは『生きろ』ということに尽きるのかな」と話し、「現代にもさまざまな犠牲が払われていて、命を全うできなかった者たちの分まで生きろというテーマを一番大きく受けた。能にも通じる部分がある」と話した。大槻裕一は「炭治郎も私自身も修業する身。そこがリンクすれば良いなと思う」と意気込んだ。

「能 狂言『鬼滅の刃』」は7月26日から31日に東京で、12月9日から11日に大阪で上演される。