お笑い芸人チャンス大城(47)が初の著書「僕の心臓は右にある」(朝日新聞出版社)を発売した。帯を書いた千原兄弟のジュニア(48)は「即映画化」、せいじ(52)は「こんなオモロいやつが今までどこに潜んでいたのか。地下芸人の壮絶な半生、ここにあり」と激賞。このほど、チャンスが取材に応じ、本の反響、笑いの原点、現在地、これからを語った。(全4回)

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TBS系「水曜日のダウンタウン」(水曜午後10時)やフジテレビ系「さんまのお笑い向上委員会」(土曜午後11時10分)などに出演し、徐々に知名度を上げているチャンス。「地下芸人」を「-向上委員会」で提唱し始め、近年の地下芸人ブームの火付け役でもある。

長年、公民館や会議室のような小さな小屋でニッチなファンに笑いを届けてきた。そんなチャンスにとって、笑いの原点とは何なのか。「中学1年の時に、急にみんなキャラクター変わったんですね。小学校まで普通やったのに、目つき変わって、学校行くの気持ち悪くて、気色悪かったんですよ。なんかいやなやつどんどん増えてきて。毎日いややなーって。ずっと笑っていなかったんですよ。だれともしゃべっていなかった。いややなーて思っていたときに、母親にうめだ花月に連れていってもらったんですよ。間寛平さんがめちゃくちゃかっこよくて。衝撃を受けて。アイドルですね。それで笑っていたんですよ。『あ、おれ、いつ以来こんな笑っているの』って。忘れられたんですよね、いじめられていること。いじめられていることを忘れさせることってすごいなって。漫才師もカッコよくて、スーツ着て2人でしゃべっているの。平日の昼間にですよ? 平日の昼間にかっこええなーって。学校休んでいったんですね、おかんもなんか感じていたのかもわかんない。今、考えたら」。

自身もその影響で、大きな劇場には憧れがある。「いずれね、ルミネ(theよしもと)とか出たいですよね。いじめられている、修学旅行いきたくない子も、中にはいると思うんですよ。家帰りたいなって。何が修学旅行や、全然たのしないわって。そんときに、どーん、チャンス大城っていうて、『こいつおもろいな』っていうの憧れていますね。かっこいいじゃないですか。間寛平さんみたいに、ダウンタウンさん、さんまさんみたいに、影響を与えられるようになりたいなって。きれいごというてますけど」。

チャンスは、吉本興業の養成所NSCに2度入っていて、同期が2つある。1度目は、中学3年の時。友達の口癖に着想を得て、ギャグを連発するネタで、ダウンタウンがMCを務め、当時、若者に熱狂的な人気を誇ったバラエティー「4時ですよ~だ」内の素人一発芸コーナー「かかってきなさい!」で優勝した。そのままNSCに入所。同期には千原兄弟、FUJIWARA、バッファロー吾郎などつわものがそろっていた。「芸人でやっていこうという意識はあったけど、意識が低すぎたなって。ジュニアさんはね、引きこもってね、引きこもって引きこもってやっと(答えを)出したっていうか。ぼくはなんか今考えてもずっと後悔していますね。でも、あんときのレベルじゃ、やってもすぐやめてたやろな。意識も低かった。しょうもないやつでしたもん」。

すぐにNSCを辞め、定時制高校へ入学。4年後に再び同級生とNSCに入る。しかし、そこでも鳴かず飛ばず。辞めて工場で働いた時期もあった。東京に進出して、別の事務所に入って活動したり、フリーとして活動したりした。芸歴の大半は日の目を見なかった。なぜそこまでして笑いを続けるのか。「なんか笑かせてしまうんですよね。工場で働いているときもギャグとか考えていましたもん。それは病気やなって思いました。普通そんなしないですよね、次のこと考えますよね。どういう仕事向いているのかなとか、資格とってとか。あほなんすよね~。最近、やっとなんか、ちょっとだけお笑いわかってきたというか。人より20年、30年おそいっすね」。

多くの芸人が口にするように、人を笑わせる感覚は、何事にも代えがたい快感だという。「やっぱり、例えが悪かったらすみませんね。シャブ中のような、クスリの感覚忘れられへん、あれに近いと思うんす。(薬物は)やったことないですけど。ずっとスベっている人は辞めると思うんですよ。変に笑いとるからいけないんですよ。あれがよくないんですよ。自分が考えたことがドカーンっていったら、そういうクスリなんていらないですよね。それが、たぶん忘れられないんでしょうね。その感覚。スポーツ選手やったら、引退せなあかんじゃないですか。お笑いは引退がない。こないだも『-向上委員会』でウケたとき、やっぱり、家帰っても寝られないですもんね。真夜中に近所の公演にいって、バッキバキのスラッシュメタルかけて、でっかい公園何周も歩いて。エンジンばーって回転したあとなんで、急に寝られないです」。(続く)【佐藤成】

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