ドキュメント映画「HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記」(福田光睦監督)が、2日に公開される。自宅をラブドールの秘宝館にした兵頭喜貴さん(48)の生きざまを、映像作家の福田光睦監督が追った。兵頭さんに聞いてみた。【小谷野俊哉】
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「9年前に埼玉の八潮に一軒家を買ったんです。都内に住んでたんですけど、飼ってる猫のことで大家のばあさんともめて。親の保険金がちょうど入ったところで、猫と暮らすために家を買いました。650万円でした」
その家には現在、20体のラブドールがある。ラブドールとの出会いは、最初はマネキンだった。
「ゴミの山に突き刺さってるのを見つけて、これは持って帰るしかないと」
その4年後の04年に初めてのラブドールを買った。「今みたいに精巧な物じゃなく、リカちゃん人形が大きくなったみたいな感じでした。最初の1体から増えて、今は20体くらい。ラブドールと愛し合っていたのは若い頃。今は無理です」
その後、ラブドールにウエディングドレスを着せて写真撮影。写真展を開いたりしていた。
「ずっとこういうことを20年以上やっています。子供の頃から特撮が好きでした。昔の特撮は改造人間の手術のシーンとか多かったんです。しかも女性の場合があって、そういうのを見て胸がキュンキュンするダメな子供でした(笑い)。八潮に引っ越してきて9年。自宅を『秘宝館』にして、ラブドールとかを見せているけど、表だった反対はないですね」
9年前に脳腫瘍になった。
「ちょうど家を買った何カ月後かに、目と目の間の奥がぶっ壊れて入院して手術です。今も腫瘍はあります。MRIで見る限り、拡大はしてないんですが違和感は、たまに感じる。体調が悪い時は、心がつんって痛くなる。その薬の影響か心臓も悪いんです。でも、酒は今でも、ガンガン飲んでます」
ネットで秘宝館を公開することで、注目を浴びるようになった。
「海外から秘宝館を訪れてくれる人も多くなりました。その後、僕の家に取材に来た人に『ちゃんと映画にして配信とかしたら、それだけで生活できるようになりますよ』って言われたんです。それで、福田くんと一緒にできるんじゃないのかと思って、連絡しました。それで、この作品が出来たわけです」
生まれは愛媛県の西予市。
「子供の頃から変わり者でした。普通、四国の男の子は野球する時代だったんだけど、それが嫌で逃げ出して1人で山で遊んでるような子でした。高校を卒業して、18歳で大学に入るために神奈川へ。大学では映画サークルの会長をやってました。家が建設業で長男だったんで、卒業して愛媛に戻ったんですけど、半年後に資金繰りとかもあって父親が自殺しちゃったんです。それで、東京にやって来ました」
以来、アルバイト生活。趣味としてラブドールを集めたり、写真を撮って暮らしてきた。
「20代からずっと清掃とかのアルバイト生活ですね。家族は妹が2人。普通に結婚して暮らしています。交流はありますよ。上の妹の息子が去年、20歳になると同時に養子になってくれました。法定相続人が1人はいないと、死んだ時にいろいろまずいことになるんで」
ラブドールに囲まれた生活。
「意思がないから、こっちが常に自由でいられる。メンテナンスは大変なんですけどね。オリエント工業という会社のモデルで、いろいろオプションを付けると1体で80万円近くします」
今後、挑戦してみたいことがある。
「写真集を出してみたいですね。カメラはずっと学生時代からやってますから。子供の時から(写真家の)ヘルムート・ニュートンが好きだったんです」
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福田光睦監督 「雑誌の編集者をやっている時に、珍しい写真を撮っている人がいると、兵頭さんの写真展に連れられて見に行ったんですよ。で、10年ぐらいは一緒に仕事をしようとは思わなかったんです。でも『家を秘宝館にしようと思っている』と聞いて、すごく興味がわいたんです。3年前にネットで危ないニュースのドキュメンタリーを撮る時に兵頭さんを撮らせてもらったんですね。それが面白かったんです」



