米俳優アレック・ボールドウィン(64)が、昨年10月に新作映画「ラスト」の撮影中に小道具の銃を誤射して撮影監督が死亡した事件で、遺族と和解が成立したことが明らかになった。

ボールドウィンは、米ニューメキシコ州で撮影中だった同作のセットで、助監督から安全を意味する「コールドガン」だと告げられた銃を使ってリハーサルを行っていたところ、銃を誤射して、撮影監督のハリナ・ハッチンズさんが亡くなった。その後の捜査で、使用した銃には実弾が込められていたことが明らかになり、ボールドウィンら関係者が刑事告発される可能性も取りざたされている。

事件を受けてハッチンズさんの夫と9歳の息子が原告となり、ボールドウィンや関係者に対し、「銃の安全基準違反があった」と主張し、銃を安全に使用するための基本的なルールに従わなかったことで致命的な結果を招いたとして、損害賠償を求める訴えを起こしていた。具体的な和解内容は明らかにされていないが、遺族の同意のもとで来年1月に撮影が再開することも決まったという。ボールドウィンは「実弾が装填(そうてん)されていたことは知らなかった」「自分は引き金を引いていない」と自身の責任を否定している。

ハッチンズさんの夫は、和解理由について「妻の死は恐ろしい事故であったと信じている。責任を追及することに興味がない」と述べ、プロデューサーとエンターテインメント界が一丸となって妻の最後の作品に敬意を表したことに感謝の意を示した。ボールドウィンの弁護士も「この困難なプロセスを通じ、誰もがハッチンズさんの息子のために最善を尽くしたいと言う具体的な願望を維持してきた」と述べ、悲劇的な状況の中で解決に貢献した人々に感謝の言葉を述べている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)