入山アキ子(53)が4日、埼玉・所沢市民文化センターミューズのマーキーホールで、デビュー15周年記念コンサートを開催した。

「こうして歌えているのは奇跡です」とあいさつし開演。道ならぬ恋を歌った15周年記念曲「一泊二日」や代表曲「ザンザ岬」「紀淡海峡」などを披露。新型コロナウイルスの感染予防対策で換気を行っての後半は、「北の旅人」(石原裕次郎)「嫁に来ないか」(新沼謙治)などの男歌をピアノ伴奏で聴かせた。

入山は防衛医大高等看護学院(現防衛医大看護学科)を卒業し、国家公務員である防衛省技官(看護師)として、胸部外科主任などを歴任した。その後「歌うナイチンゲール」として歌手に転身した経歴を持つ。新型コロナウイルスの感染が拡大した時、医療現場に戻ることを考えた。呼吸療法認定士の資格も持ち、実際に「(コロナ感染の)軽症者をまとめる責任者に就いて欲しい」という依頼も受けた。

「同僚は最前線で戦っている。戻るなら、歌の道を断ち切って行くしかない」。入山は激しく葛藤した。考え抜いた末に「私は歌う看護師として、知名度が上がれば、(健康アドバイスなどで)もっと大きな力を使えることを目指したのだから、今は中断せずに、そこを目指し続けよう」と決意した。

その後、恩師である作曲家の鈴木淳氏や、所属事務所社長ら親しい人との悲しい別れもあった。開演で「歌えているのは奇跡」と語ったのは、そうした数々の経緯があったからだ。

会場には医療現場で一緒に働いていた同僚や、元気になった患者さんらも駆けつけた。この日も曲間で歌う看護師として「ずっと座っていると大変です。首と肩の筋肉をほぐしましょう」とアドバイス。さらには「手洗い、うがいはもちろん、何と言っても免疫力のアップが大切です。よく寝て、よく食べて、時々いい歌を聴いて、歌ってください」と語り掛け、会場を和ませた。

アンコールを含め全16曲を歌った入山は「皆様と巡り合えて幸せです。この先、何があろうとも笑顔を欠かさずに、3つ、4つ上のステージへ、これからも歌い続けます」と誓った。【笹森文彦】