日本で初めて「eスポーツ」を題材にした、映画「PLAY!~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~」(古厩智之監督)が8日に公開される。奥平大兼(20)鈴鹿央士(24)がダブル主演を務めた。話題作に続々と出演する若手俳優2人が同作に込めた思いや互いの印象を語り合った。【加藤理沙】
■使わない脳を
同作は徳島県の高専(高等専門学校)を舞台に実在の男子学生をモデルに描いた青春映画。奥平演じるeスポーツビギナー翔太、鈴鹿演じる天才ゲーマー達郎が、1チーム3人編成の「ロケットリーグ」にエントリーし、全国高校eスポーツ大会を目指す。
-ゲーム好きの2人が同作で初共演。オファーを受けた時の心境は
奥平 ゲームが元々好きで、ロケットリーグも知っていました。eスポーツも最近盛り上がる中、映画に落とし込んで盛り上がるワクワク感、自分が携われるうれしさが強かったです。
鈴鹿 大兼がキャストに決定したと聞いてすごく楽しみで。共演したい1人で、このタイミングで出会えるうれしさがありました。
-練習会では、ロケットリーグのプレーにも挑戦
鈴鹿 当たるだけで「やった!」っていうレベル。
奥平 ゲーム歴があっても難しすぎました。普段のゲームでは使わない脳というか。特殊な車でサッカーをするので(笑い)。
-20代の2人には身近だったというが、eスポーツ題材の映画は日本初
奥平 撮影した年、好きなゲームの世界大会があって現地に行きました。頑張ってくれた選手のおかげで浸透してきたと思う。
鈴鹿 “日本初”に出られるうれしさと、オリンピックでも競技として認められつつある中で映画ができることも良いなと。
■占いで言われ
-家庭問題を抱えながらも明るく愛されキャラの翔太。ケガによる挫折で他者と関わりを持たなくなった達郎。役と似ている部分は
奥平 翔太は基本的に情けない。あるシーンで、監督の指示ではなく自然に出た演技で「すごく情けなくて良い」と言われて。これは俺の感覚だから俺って情けない? と思ったり(笑い)。ゲームで喜ぶシーンも僕が演じているからこそと思える時があります。
鈴鹿 達郎は「人を人として見ないタイプ」と監督と話しました。そこが変化していけばと、落としどころを探しました。僕は初対面だと人と距離を置いているらしい…占いで言われて、確かにって(笑い)。懐に入るのも時間がかかるし、視線をずらしちゃう。
-お気に入りは屋上で翔太、達郎、動画好きの亘(小倉史也)が初めて顔を合わせるシーンだという
鈴鹿 この映画ならでは。オンラインで会えればよくて、顔を合わせることがなかった3人の空気感。
奥平 ゲームだけではならない、リアルだからこその空気感が好きでした。
■初めて?すご
鈴鹿は19年に「蜜蜂と遠雷」、奥平は20年に「MOTHER マザー」でデビュー。2人は1年違いで日本アカデミー賞をはじめとする数々の映画新人賞を総なめにした。
-会う前から気になる存在
鈴鹿 結構、いろんな賞がかぶってるんだよね。
奥平 僕の場合はテレビで央士君の受賞を見てたからすごいなって。そしたら、次の年に取れたんです。「蜜蜂と遠雷」で初めて見た印象は「初めて? すご!」です(笑い)。
鈴鹿 同じく。「MOTHER」を見て「すご!」って思った(笑い)。
奥平 新人賞は1度しか取れないですし、自分の前後に誰が受賞か気になる。央士君とは4歳違いなので、同じ作品になるだろうと思っていた1人でした。
-初対面はロケットリーグのゲーム練習会だった
鈴鹿 初めましてだけだったよね、一応横並びなんだけど画面と向き合って(笑い)。撮影中盤に「新人賞かぶっていたね」「緊張するよね」という話に。
奥平 徳島ロケからたくさん話すようになったね。
-役作りへのアプローチも対照的で、お互いの存在が刺激になった
奥平 特にアプローチの仕方が良いなと思えるのが央士君。自分にはできないことができる人で面白くて、まねできるかわからないけど、尊敬できます。
鈴鹿 何度もテイクを重ねると、繰り返しの作業になる時があるんですけど、大兼は毎回初めてのようで新鮮。楽しいシーンではなくても、その瞬間を生きるように見えるんですよね。
■1回映画館で
-今後もあらゆる役に挑戦する2人。同作の魅力は「映画館の大画面で見るゲーム画面」と声をそろえた
奥平 去年、改めて今しかできない芝居があると気づけて。いただいた役を今の感覚で演じたいです。eスポーツもどれくらい身近かわからないけど、新しい発見をして欲しい。
鈴鹿 僕は作品に向き合って、俳優を続けたいので、目標は継続と向上。この映画は時代に合う価値観や見え方、青春要素も描かれた作品。ワクワクするし、新しい作品として、1回映画館で見て欲しい。スポーツを見ている感覚になるので、本当にすごいです。
奥平 本当に、とりあえず1回見てくれ! って感じだね(笑い)。
◆奥平大兼(おくだいら・だいけん)2003年(平15)9月20日、東京都生まれ。18年に演技未経験ながら、オーディションに挑戦した映画「MOTHER マザー」でメインキャストに抜てき。ブルーリボン賞など、公開された20年に多くの新人賞を受賞。TBS系「恋する母たち」でテレビドラマ初出演、23年「君は放課後インソムニア」で映画初主演。日本テレビ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」映画「ヴィレッジ」など出演。173センチ。血液型O。
◆鈴鹿央士(すずか・おうじ)2000年(平12)1月11日、岡山県生まれ。映画「先生!、、、好きになってもいいですか?」にエキストラで参加したことがきっかけでスカウトされ、芸能事務所に所属。19年「蜜蜂と遠雷」で映画初出演。デビュー作でキネマ旬報ベスト・テンなど多くの新人賞を受賞。NHK連続テレビ小説「なつぞら」テレビ朝日「六本木クラス」フジテレビ「silent」映画「ロストケア」など出演。178センチ。血液型O。