昨年12月31日に肺塞栓(そくせん)症で89歳で死去した女優、タレント中村メイコさんの「乾杯で送る会」が18日、都内ホテルで営まれ、約400人が出席した。女優としてのカーテンコールのような会にしたいという家族の希望で、会の名称が決まったという。

開催前、夫で作曲家神津善行氏(92)をはじめ、長女で作家神津カンナ氏(65)、次女で女優神津はづき(61)、長男で画家神津善之介氏(51)が取材に応じた。

善行氏は何度も涙をぬぐいながら「すごく甘えん坊で、全部僕に頼んでいた。いなくなるとさみしい」と声を絞り出した。

亡くなった日は、NHK紅白歌合戦を見ており、具合が悪いという中村さんを善行さんが寝室に連れて行ったが、すぐに呼び戻されたという。首の下に手を入れて体を抱き起こすと、中村さんにしばらくこうしていてほしいと言われたそうで、善行氏は「僕の小指に人さし指をぶら下げてきて、力があったんですが、1分ぐらいで、力が抜けて指がぽろっと落ちたんです。その時にやっぱり息を引き取ったらしいです」と話した。救急搬送され蘇生措置も施されたというが、中村さんはそのまま旅立った。

善行氏は「抱かれて死ぬということは病院にいたらありえないこと。彼女は計算して僕に自分を抱かせたと思うんですよ。人生の最後に幕を引く、引き方が非常にきれいだった」と、また涙をぬぐった。

生前、中村さんと善行さんは、どちらが先に逝くかということをよく話していたという。善行氏は「女房は『私はあなたの葬式なんかできないから絶対に黙って先に逝かないでね』と言われていました。俺も、あなた1人を、遠い、道も分からない所へ行かせるわけにはいかないから、あんたが死んだら俺もついていってやるよって言ったらうれしそうに泣いていました。僕が今一番したいのは、今、彼女を連れて向こうの国へ一緒に行ってやりたい。僕の今の気持ちです」と涙した。

会場正面には、ほおづえでほほ笑む写真が飾られた。生前、中村さんが亡くなったら使ってほしいと残した箱の中に入っていた何枚かの写真から、善行さんが選んだという。写真の前には、お酒が大好きだった故人のために、赤、白のワインとスコッチウイスキーの水割りが置かれた。

▼主な出席者 阿川佐和子、浅丘ルリ子、東貴博、生島ヒロシ、石川さゆり、伊東孝明、うつみ宮土理、海老名香葉子、大出俊、大村崑、小澤征悦、片岡鶴太郎、茅島成美、黒田アーサー、小堺一機、堺正章、佐藤B作、柴田理恵、ジュディ・オング、笑福亭鶴瓶、関口宏、テリー伊藤、十朱幸代、古舘伊知郎、増田明美、萬田久子、水谷八重子、三田佳子、宮崎美子、南こうせつ、森公美子、山田邦子(敬称略)

◆中村(なかむら)メイコ(本名神津五月)1934年(昭9)5月13日生まれ。作家中村正常氏の長女。2歳の時に映画「江戸っ子健ちゃん」でデビューし、天才子役と呼ばれた。テレビの試験放送から、多くのドラマに出演してきた。59~61年にはNHK紅白歌合戦の司会を務めた。57年に作曲家神津善行氏と結婚。長女は作家神津カンナ氏、次女は女優神津はづき、長男は画家神津善之介。