シンガー・ソングライター小田和正(78)が10月1日、横浜アリーナで開催した2年ぶりの全国アリーナツアー「みんなで自己ベスト!!」最終日公演を取材する機会に恵まれた。23年8月に75歳10カ月で全国アリーナツアーを開催した自身の記録を塗り替え、国内アーティストとして史上最年長記録を更新。最後に「また会おうぜ!」と再会を誓う姿に、心を強く揺さぶられた。

小田のライブを初めて取材したのは今年5月、静岡で行われた同ツアーの初日公演だった。練り歩く場面が多いことは事前に聞いてはいたが、実際に会場に張り巡らされた花道を歩く様子を目の当たりにすると驚いた。客席降りでは狭い通路をファンに囲まれながら進み、触れあう時間も。公演中に何度も「ありがとう!」と感謝を叫んでおり、ファンを大切にする姿が強く印象に残った。

そこから約5カ月。全国13カ所28公演をやりきり、31万人を動員した。所属事務所によると順調なツアーではあったが、5月の札幌公演では一時呼吸が乱れる場面があったという。公演は無事終了したが、小田は「飛ばしすぎちゃった」と吐露。スタッフはセットリストの変更を提案したが、小田は「もう1回やらせてくれ」と伝え、次の公演をそのままでやりきった。

ツアーの最終地となる地元横浜アリーナ公演では、ファンはもちろんアーティストや関係者も多く押し寄せた。同所公演からはフリフラ(制御式ペンライト)も導入され、鮮やかな演出でファイナルを彩った。

最終日公演でもひょうひょうとしたトークは健在。30年ほど前に、母校の聖光学院高校の生徒の前で話す機会があったといい「大好きなことを1つでも見つけて、追っかけて。そういう人生がいいと思うよと(伝えた)。あまり関心がなさそうでしたけど…」と苦笑いし、客席を沸かせた。恒例の客席降りでは、車椅子席まで上ってファンと手を触れあう場面もあった。

小田がツアーで訪れた都市で撮影するご当地紀行は30年続いており、同公演では傑作選も放映。懐かしの貴重映像や地元民と触れあう和やかな小田の様子を会場一体となって楽しんだ。 所属事務所によると、小田もスタッフも「いつ最後になってもおかしくない」という思いを持ちながらも、各地のイベンターとの縁を大切にし、新しい曲を作ってファンに届けに行くという意志をもって今回のツアーを完遂。ツアー後の活動予定は白紙で、何も決まっていないという。最終日公演では事務所スタッフたちも、小田が最後にファンへ「また会おう」といった言葉を伝えるのかどうか分からないでいた。

最終日公演は約2時間半に及んだ。ファンも報道陣もスタッフも、小田の姿を食い入るように見つめ、歌声や言葉の1つ1つを受け取った。アンコール後にはこの日だけのスペシャルブロックが用意され、松たか子ら豪華ゲスト8組が登場。「キラキラ」「ラブ・ストーリーは突然に」をともに披露して大いに沸かせた。

最後の曲は、故郷横浜への思いを込めた「my home town」。小田は同曲を歌い上げ、客席を見ながら「また会おうぜ!」と強く叫んだ。その直後に会場はこの日一番ともいえる大歓声に包まれ、小田も顔を押さえて感極まった様子。ファンを思う熱い気持ちが思わずあふれ出たかのような、美しい瞬間だった。【玉利朱音】