先日、秋元康氏に取材をする機会に恵まれた。

新たに総合プロデュースを手がけるボーイズグループと、来夏めどオープンの専用劇場についての取材を、劇場予定地であるダイバーシティ東京プラザ6階で行った。

インターネットであらゆるコンテンツに触れることができる時代にあえて、専用劇場で公演を行うという、かねて確立されたスタイルで挑む。「今じゃなくてもいいとか、オンデマンド的なものが多い」と現代のエンターテインメントを表現し、その上で「『生』の面白さは、コピーできないことだと思う。それぞれの記憶の中にしか残らない」と語った。

取材の中で、度々出てきて、強調されたワードが「目撃」だった。「今、一番ぜいたくなのは『目撃すること』だと思うんですよ」とも話していた。己の目で見ることに高い価値を見いだしていることは、話しぶりからもよく感じられた。

取材を終えて記事を書いていた際、ふと自らを省みた。記者という仕事は、「目撃」の日々である。イベント会場や、会見場へ赴き、登壇者や取材相手の発言や表情に感覚を研ぎ澄ます。しかし、それが「一番ぜいたく」なことだと感じられていただろうかと考えると、うなずくことはできなかった。駆け出したばかりの新米記者には、正直に言うとまだそのような余裕はなかった。

記者の現状を端的に表すと未熟の一言に尽きるものではあるが、改めて自身の日々を見つめ直し、当たり前ではないことを実感する機会となった。

秋元氏は「自分の人生を振り返っての財産はやっぱり目撃したこと」とも語った。芸能記者としてまだまだ日は浅いが、確かに既に何度も、一度きりの貴重な瞬間に立ち会わせていただいている。振り返って財産だと思えるようにするためにも、いずれは場の空気を味わったり楽しんだりする余裕を持つべく、日々鍛錬を積んでいきたい。

思えば、同じく秋元氏が手がけるAKB48には「目撃者」という曲がある。10年に開始された公演のタイトルにもなっており、CDとしては13年にリリースされたもの。世の中にスマートフォンが普及してきた頃の曲だ。

「僕たちは目撃者 決して目を逸らしはしない 今起きた出来事を 誰かにちゃんと伝えよう」

この歌詞は先日の秋元氏の言葉に大きく重なるものがあるように思えた。

記者として、目の前で「今起きた出来事をちゃんと伝えよう」。その上で、「ぜいたく」な体験をさせてもらっている感謝を忘れずに日々の取材へ挑もうと、襟を正すきっかけとなった。【寺本吏輝】