自伝的小説を出版した元SKE48でタレントの平松可奈子(34)にインタビューを行った。記者も文章を書く仕事だが、小説を1冊書けるかと言われるとできる気がしない。聞いてみると、思わぬ苦労があったようだ。

「難しかったのが、私は舞台に何年も立ち続けてきて、台本が常に身近にあったので書けるって思ったんですけど、舞台の台本と小説ってこんなにも違うんだと…」。これまで自己啓発本やビジネス書を好んで読んできた。加えて、女優業で慣れ親しんできたのはト書きや、誰のせりふかが明記されている台本。「最初に私が提出した、やりたい場面を書いたものが全部舞台仕様になってて、指摘されて気付いたんです。自分視点で情景を描くのが難しかった。読み手が、これは誰がしゃべってるのか分かるように書かないといけないし。自分の感情の高ぶりを文章で高揚させていくのも難しくて。いろんなジャンルのお仕事をしてきましたけど、一番悩まされたと思います」。

貴重な経験もできた。「ドラマの『校閲ガール』にすごくハマってたんですけど、実際に校閲の方から赤ペンチェックが届いた時に『わ、本物だ』って」。プロの指摘にも助けられながら、200ページを書き切った。表紙イラストは、デザイナー業も手がける平松が「初めて自分のために作ったソロ衣装を着ている私」をテーマに描いてもらった宝物。「1冊の本に、本当にたくさんの人が関わってるんだなっていうのを実感しました。学び、学びの半年間だったなと思います」と感謝した。

本著はいじめ体験が明かされたことでも話題になった。学生時代は狭い世界で生きていた。「いなかってうわさ話も広がるし、閉じ込められている感覚というか、強迫観念があった。でもいざオーディションを受けたり、上京したりした時に、意外と人って自分に興味がなくて、場所を変えれば受け入れてもらえたり、自分の才能が生きたりする。自分の中では大事件でも、周りから見たらそんなに大きいことでもない、みたいなことに気付けたんです」と、つらい経験が世界の広さを知るきっかけになった。

家族のエピソードは全て実話だ。小説内でもキーパーソンになっている3歳下の弟を「ベスト・オブ・いいやつをあげたいぐらいの人格者」とたたえる。寄り添い、家庭内で唯一、いじめに気づきながら隠し続けてくれた。泣きながら読んだ弟から「すごくいい本だった。負けるな」と、当時の言葉で感想を送ってもらったという。

「あの出来事ってすごくその後の自分を変えていて。人に優しくなったし、人を傷つけないようにしようって思うようになった。今の自分が好きなので、それを形成してくれたきっかけは間違いなくあの時だったと思うと、全てのことに意味はある。誰しもつらい過去ってあると思いますし、不安で眠れない日とか絶対あると思うんですよ。そういう人に、今起こっていることは通過点でしかないって気付いてもらえたらうれしい。私にはここしかないと執着してしまっている人にも、この本がきっかけで新しい選択をしてもらえれば、すごく本望だなって思います」。体温の高い真っすぐな言葉に、私も励まされた。【鎌田良美】