「涼宮ハルヒの憂鬱」などの人気アニメを手がけた山本寛監督(36)が17日、フジテレビ系で来年1月13日から放送スタートの新作アニメ「フラクタル」(木曜深夜0時45分)のアフレコ会見で、「これが失敗すれば引退も辞さない」と引退覚悟の声明文を発表した。同作品が、最後のアニメ作品となる可能性も出てきた。

 ファンから「ヤマカン」と呼ばれ、アニメ界の若きリーダーと支持されてきた男による衝撃的な声明だった。「随分悩みました。もう一年以上になるでしょうか(中略)もう一本だけアニメを監督してみようと思います」(原文より抜粋)。今年は女優川島海荷(16)を起用した映画「私の優しくない先輩」で、初の実写にも挑戦するなど活動の幅を広げていただけに、驚いた取材陣から質問が相次いだ。

 「フラクタル」は退廃的な未来を舞台に、14歳の少年クレイン(声は小林ゆう)と16歳の少女フリュネ(声は津田美波)が出会い、始まる冒険活劇だ。山本監督は「今、冒険活劇がないからやっておこうと。必要なものを必要なときにやる。でも必要でないと言われるなら、アニメに対してよく分かんないというところまで追い詰められている。はき出すものを今のうちにはき出しておこう」と、悲壮な覚悟を口にした。

 今作が放送される深夜枠「ノイタミナ」は、フジテレビが大人に通じる「連ドラのようなアニメ」を目指し05年4月に立ち上げた。過去「ハチミツとクローバー」(05年)「東のエデン」(09年)などドラマ、映画化された作品が多い。最高視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、「のだめカンタービレ巴里編」(08年)の第9話が記録した6・6%。山本監督の新作が、深夜枠からどこまで羽ばたけるか注目だ。

 [2010年11月18日9時26分

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