「太陽にほえろ!」「北の国から」などのドラマやバラエティー番組に数多く出演した俳優の地井武男(ちい・たけお)さんが29日午前7時5分、心不全のため東京都港区の病院で亡くなった。70歳だった。葬儀・告別式は近親者で行い、後日、お別れの会を開く。「ちいちい」の愛称で親しまれ、テレビ朝日系の街歩き番組「ちい散歩」でも人気だった。今年2月からは心臓疾患を理由にレギュラー番組の出演を見合わせ、入退院を繰り返していた。

 地井さんに異変が起きたのは1月下旬。視野が狭くなったため緊急入院し、精密検査を受けた。その後、目の具合は良くなったものの、検査で心臓に疾患があることが分かった。96年に狭心症で入院した経験のある地井さんに医師から「無理をすれば心不全を起こす可能性がある」とドクターストップがかかった。治療に専念するため、2月から「ちい散歩」などレギュラー番組出演を見合わせた。

 2月末にいったん退院し自宅で療養した。その後も3日から1週間の日程で検査入院を繰り返したが、5月には自宅周辺を散歩する姿が週刊誌に撮られた。治療が長引くため、5月に終了した「ちい散歩」最終回には「突然病に倒れ私自身もびっくり致しました。この際治療に専念すべくお休みさせて頂くことに致しました」と直筆コメントを寄せた。6月20日すぎに検査入院したが、病室でストレッチしたり、院内を歩き回るなど元気な様子で、少し痩せた体も「いいダイエットになった」と周囲を笑わせたという。28日も家族や事務所関係者と談笑していたが、翌29日早朝に容体が急変。妻、長女にみとられて息を引きとった。

 8人兄弟の末っ子に生まれ、高校時代はソフトテニス部でインターハイにも出場。俳優座養成所の同期(15期)に故原田芳雄さん、故太地喜和子さん、栗原小巻、林隆三らがいた。花の15期と言われたスター候補生が多かった中では出遅れ、68年、26歳の時に「斬る」で映画デビュー。70年の映画「沖縄」で初めて主演した。シリアスな役から、ひょうひょうとした役、コミカルな人物まで幅広く演じた。「太陽にほえろ!」で石原裕次郎さん演じるボスを助ける温厚な刑事、「北の国から」では田中邦衛演じる主人公の友人を演じた。

 50代からはお笑いコンビ、ダウンタウンのバラエティー番組に出演したことをきっかけに「ちいちい」の愛称で親しまれた。06年に始まった「ちい散歩」では気さくに路地を歩き、立ち寄った店で買い食いしたり、公園で好きなブランコで遊ぶ姿が共感を広げた。趣味の水彩画を生かして番組内で描いた絵の画集「ちい散歩

 地井さんの絵手紙」を刊行。鳥好きで、お気に入りのフクロウの置物は50以上あった。

 仕事が大好きで、1年の360日に仕事が入り、休みは正月だけの時もあった。74年に元女優真木沙織さんと結婚。1女をもうけたが、沙織さんは01年に乳がんで亡くなった。8年間の闘病中、沙織さんは「私が死んだら、若くていい人、見つけるのよ」が口癖のように地井さんに話したという。妻の死から1年後、地井さんへの励ましの手紙をきっかけに交際を始めた12歳年下の元モデル女性と、三回忌を待って結婚。律義な地井さんらしく、前妻の遺言を守った再婚だった。

 ◆地井武男(ちい・たけお)1942年(昭17)5月5日、千葉県生まれ。俳優座養成所を経て68年、映画「斬る」(岡本喜八監督)でデビュー。映画のほか、日本テレビ系「太陽にほえろ!」、フジテレビ系「北の国から」など連続ドラマも出演作多数。親しみやすい人柄で、バラエティー番組などでも人気に。愛称の「ちいちい」はダウンタウンの特番で付けられた。元女優の前妻は01年に乳がんで死去。04年に元モデルの女性と再婚した。170センチ。血液型B。