31日、日本ハム戦の6回途中から登板しプロ初勝利を挙げたオリックス斎藤綱記
31日、日本ハム戦の6回途中から登板しプロ初勝利を挙げたオリックス斎藤綱記

生き残るために、変化を恐れなかった。オリックス斎藤綱記投手(23)は、3年前、ある決断を下していた。

「プロの世界で投げるには、それしかないと思ったんです」

北海道・北照から14年ドラフト5位でオリックスに入団。17年までのプロ3年間で、1軍登板は1試合だけだった。心を決めた。プロ入り3年目のオフ、左肘の位置を下げた。サイドスローに転向し、自分の居場所を確立しようとした。「モデルは、とくになかったですね。とにかく、あのときは必死で肘を下げるのに慣れようとした感じでした」。ブルペン投球で投球フォームを確認する日々が始まった。

17年オフ。競争相手が入団してきた。「田嶋がドラフト1位で入ってくるってなったんです…」。同学年で、同じ左腕。嫌でも比べられる。そのとき「あ、無理だな…って。そう正直に思った」と振り返る。なんとか1軍マウンドに登れるように「何かないかなと思ったときにサイドスローが(チームに)いなかったので(自分が)なってやろうと思った。プロの世界で投げたいと、すごく思ったんで」と歯を食いしばった。

耐えた。18年に5試合、19年に11試合登板と着実に1軍でチャンスをつかんだ。そして、今季。7月31日の日本ハム戦(札幌ドーム)。プロ6年目、通算27試合目の1軍マウンドで、プロ初白星をマークした。同点の6回1死一塁に登板。リズムのいい投球で宇佐見、中島から連続空振り三振を奪い、流れを引き寄せた。味方打線が勝ち越しに成功し、勝利。ゲームセットを見届けると、拳を強く握った。

「1試合1試合で、チャンスをもらっている立場なので、1試合も落とさないようにという気持ちで投げています。(今は)ビハインドで行くことが多いんですけど、絶対に1点もやらないぞという気持ちで」

気持ちの強さも、投球スタイルから垣間見える。「昨年に比べて、左打者のインコースに真っすぐを使えるようになったのが大きい。スライダー一辺倒の投球じゃなくなった。スライダーも速くなって、曲がりが大きくなった」。好打者との対戦で、自身のレベルアップも図る。

「(ソフトバンクの)柳田さんみたいに球界を代表するバッターのときほど、『自分がどういうピッチングをするか』を心掛けている。この前(7月14、15日)は正直、やられたんですけど…。次はインコースを絶対に使わないとダメ。次に対戦することがあれば、インコースに突っ込むと思うので、そういう練習をしていきたい」

ヒットを2本打たれたが、手応えは感じている。「スライダーにしても、いい追い込み方をしたと思う。最後に甘いスライダーになった。自分のコントロールの悪さが招いた結果。改善すればなんとか勝負にはなると思う。まだまだですけど、昨年よりは自分でコントロールできるようになったかなと思います」。

ブルペンで気合を入れ、超一流と対峙(たいじ)する。あのときの決断が、今に生きる。【オリックス担当 真柴健】

プロ初勝利を挙げ記念撮影に応じるオリックス斎藤綱記(2020年7月31日撮影)
プロ初勝利を挙げ記念撮影に応じるオリックス斎藤綱記(2020年7月31日撮影)