文星芸大付(栃木)が、劇的サヨナラ勝利で16年ぶり11度目の夏の甲子園出場を決めた。4点のリードを9回に追いつかれたが、その裏、5番黒崎翔太捕手(3年)がスライダーを捉え、左翼席にサヨナラ本塁打を放った。昨秋、今春と県大会で敗れた作新学院を相手に、三度目の正直でリベンジを果たし、ナインはうれし涙を流した。
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勝利目前の9回に4点差を追いつかれても、黒崎は「絶対打ってやる」と燃えていた。1死無走者。「狙っていた」というスライダーを強振すると、打球は“作新の呪縛”を解く劇的なサヨナラ弾になった。「歴史を変えたんだ」と右手を突き上げた。
昨秋、今春と県大会で敗れた作新学院が相手。高根沢力監督(49)は「いつも作新相手だと萎縮していた。今日はそれが全くなかった」と、序盤から試合を優位に進め、土壇場で追いつかれても慌てなかった。
1点を追う8回に2ランスクイズで逆転勝ちした準々決勝の烏山戦後、同監督は「君たちは1回死にました。だから思い切りやろう」と語りかけた。甲子園が懸かる決勝の舞台、因縁の作新学院が相手でも、ナインははつらつとプレーした。
ヒーローになった黒崎は2年春、成績がふるわず練習試合のメンバーから外れた。補欠は試合の補助に回るが、ふてくされてスマートフォンを使用。高根沢監督の目にとまり、「やめてしまえ」と叱られた。「もう野球をやめよう」。黒崎は3日間練習をサボったが、「辞めたら何も残らない」と我に返り「戻らせてください」と謝った。高根沢監督は「死ぬ気でやれ。男と男の約束だ」と受け入れた。
甲子園を決めた黒崎は「監督があの時見捨てないでくれた。今日で恩返しできたかな」と照れくさそうに笑うと、同監督は「帳消しですかね(笑い)」と、真っ赤に泣きはらした目で話した。“作新の呪縛”を解いた文星芸大付が16年ぶりに夏の聖地に戻ってくる。【黒須亮】
◆文星芸大付 1911年(明44)、宇都宮実用英語簿記学校として設立された私立校。1948年に宇都宮学園と改称し、2003年に現校名。生徒数は949人(うち女子100人)、野球部は1915年に創部で部員数は90人。甲子園出場は春2度、夏は11回目。主な卒業生は元ヤクルト真中満、元西武片岡保幸。所在地は宇都宮市睦町1の4。上野敬子校長。

