大黒柱の覚悟が、劇的勝利を呼び込んだ。

楽天岸孝之投手(34)が、1カ月ぶりの復帰登板となったオリックス戦で6回3安打1失点と好投した。

8回に追いつかれて勝ち星こそつかなかったが、今季最多タイの9奪三振と健在ぶりを示した。2カード連続勝ち越しの勢いのまま、13日から5・5ゲーム差の首位ソフトバンクを本拠地で迎え撃つ。ルーキー渡辺佳明のサヨナラ打を見届けた岸は、穏やかな表情で言った。「自分が投げた試合でチームが勝つ。どんな形であれ、それが一番ですから」。6月8日の中日戦を最後に遠ざかる3勝目を逃しても、気高く振る舞った。

2回に後藤を詰まらせた当たりが中前に落ちて先制され、2死から若月の打球が右手を直撃した。「(当たる箇所が)少しでも上か下にずれていたら、投げられなかったかもしれない」。瞬間的な痛みは走ったが、むしろ投球は研ぎ澄まされた。3回は西野、吉田正に対していずれも直球をアウトローに突き刺し、連続で見逃し三振。昨季両リーグ最多59個の見逃し三振を量産した直球の制球は乱れない。「内角も外角も、それなりにコントロールできた」と涼しい顔で言った。

7月20日に予定していた後半戦最初の先発を回避し、高熱で入院。「熱なんて、出すものじゃない。難しい。全部がリセットされてしまった。ずっと寝ていたから腰も固まるし、(練習でも)すぐに疲れちゃう」と、もどかしさが募った。復帰前後で体重は変わっていないのに「『やせたね』って言われる」。苦笑するしかなかった。開幕戦で左太もも裏に違和感を訴え、約2カ月離脱しただけに「(2度の離脱を)取り返すのは難しい。少しでもチームのためになるのであれば、何でもやっていく」と悲壮な覚悟も口にしていた。3回で3被弾した4日の2軍戦から見事に立て直し、86球で交代した。「いけと言われれば、いけましたけど(復帰登板で)いろいろ気を使ってくれたんだと思う」。ここからフル回転で応える。【亀山泰宏】