国学院大(東都大学)が巨人3位の最速153キロ右腕・田中千晴投手(4年=浪速)の好投で初の決勝進出を決めた。

試合前のブルペン。田中のイヤホンからはKep1erの「Wing Wing」「wadada」が流れていた。アップテンポのリズムにノリノリでマウンドに上がると、テンポよく力強い直球と、キレのあるフォークを丁寧にコースに投げ分け、5回まで無安打投球。「今日はリズムを作って、チームに流れを作っていこうと思って投げました」。5回2/3を投げ2安打2失点と試合を作り坂口翔颯投手(2年=報徳学園)につなげた。

ドラフト後初登板にも、緊張なく自分の投球に集中した。登板3日前には、巨人の脇谷スカウトから「勝っても負けてもドラフトの順位には関係ないから」と言われ「気持ちを和らげてくれました(笑い)」と、好投につなげた。

趣味の音楽を野球に生かした。音楽一家に育った。父康雄さん(57)は高校時代、バンドを組みギターを担当。文化祭で演奏するほどの腕前。母三知代さん(55)はアマチュアの電子オルガン奏者。音大卒や絶対音感を持つ親戚も。田中千も幼稚園までピアノを習い、小さいころは身の回りに音楽があふれる環境で育った。「親には好きなことをやれ、と言われた。やらされる音楽は嫌いだったので」と小5で軟式野球のチームに入り本格的に野球を始めた。以来、音楽は趣味に。今でもギターの弾き語りが得意で、十八番は平井堅の「瞳をとじて」。いい気分転換だ。

ピッチングにも音楽を取り入れた。「スポーツもリズム感は大事だと思う」。投球フォームも、リズムで覚えると再現性が上がることに気付いた。「8月序盤から、リズムとタイミングだけにしてみよう、と思って。『バン、ツーバン』みたいなリズムで投げたら案外合って。あ、これだけでいいんやと思いました」。リズムで感覚をつかみ、調子の波を克服。今秋はスカウトにアピールし、プロ入りを決めた。

大学ではプロ入りを目指す中で、日本一を目指すチームメートに心を動かされた。「周りのみんなのおかげで投げられている。それに気づけた4年間。みんなで日本一をとって、終わりたい。それが大学野球、最後の思いです」。決勝戦も、ノリノリのリズムで頂点を取りにいく。【保坂淑子】

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